お宮さん 松岡尚子

リズミカルに君は薔薇より美しと今日布施明テレビにうたう

文化祭にお宮で登場寛一に蹴られた布施君爆笑受けぬ

ステージに演奏をするブラスバンド彼のフルート音色の優し

思い出は雪合戦と武蔵野の木造校舎の暗き廊下と

中学の布施君少し照れ屋にて教室前に女子が騒めく

初茄子  JUN

指先に蔕(へた)の痛さや初茄子

選挙権得し孫と飲む麦茶かな

夏の夜の少し動きしマリア像

人知れず幽かな色の虹立ちぬ

聳え立つスカイツリーが炎暑呼び

銀の雨   JUN

平然と生き抜く力羽抜鶏
をだまきや白き空より銀の雨
少女からレディーに脱皮夏帽子
夏服やはにかむ笑みの輝ける
共白髪二つで一つさくらんぼ

激辛ラーメン 松岡尚子

カウンターに前屈みなるカップルが激辛ラーメン食べる昼時

口の中炎と燃えているのかな激辛ラーメン美味しと青年

隅田川の花火すーっとぱって感じ辛味例えておみなご笑う

浴衣着るおみなは辛き豚挽きとタカノツメ多き台湾ラーメン

人気ある蒙古タンメン赤きつゆ野菜おしやりおのこ飲みたり

『かるがも』 松岡尚子

身のうしろ十一羽の子を引き連れて親鴨が行く梅雨明けの昼

高き壁上がらんとして子は落ちぬ親がも道替え側溝を行く

仕方ないことはやっぱり仕方ない来いと言われて従う小鴨

かるがもの親子側溝あゆみ行きひょいと上がりて草原を行く

かるがもの親子よちよち白いつめの花を揺らして川へと急ぐ