短歌研究1月号高野公彦選MOHYO

水張田の光まぶしく目を閉じてまた目を開けて車窓に揺らる

家族らと共に歩みて墓参する段差の所は支へられつつ

樹木希林死のニュース見つむ台湾で同年同月生まれし吾なり

白桔梗    JUN

白桔梗加賀の茶人の佇まい

朝霧や木造橋の向かうより

ひと日終へひと日は速し温め酒

松手入れ枝葉に透けて青き空

身に染むや古き映画の弾む聲

寒椿咲く  NAOKO

独居する女性は病みて酸素ボンベ引きつつ階段上りて行けり

電子辞書買いたし店に幾たびも足を運べどまたも戻り来

歯が抜けし寂しさなどは詠うなよ自らにいう豆腐たべつつ

言の葉は君のくちより発語され暗示のごとく寒椿咲く

娘言う「セットにしようトーストに卵のサラダも付くからね」