沖縄舞踊「追善公演」  佐野豊子

うぐいすの鳴く野にいでて若菜tつみしむかしの人に流れいし時間

恋占はさだかならねど舞台の多くは恋するおみなとなりて舞うなり

ライト照り野に花をつむ十五歳にもどれもどれず舞型ゆれる

チケットを売ることばかりに奔走し風に追われる下っ端舞いびと

ゆったりとボーとすること大切な時間と思う無くした今は

豊子

歌のメモ取る  松岡尚子

久々に会ひし姉なり両膝の痛むと言ひつつ歌のメモ取る

池袋の上階の店が気に入りて姉と食せりあんみつぜんざい

主人公ネルロと犬のパトラッシュ筋に通った生き方をする

綾子

惜春

ひとを待つ暮れ行く春の聖(ひじり)橋

春惜しむニコライ堂の袂(たもと)より

初蝶

初蝶の解き放たれし空があり

春を喰ふアスパラガスは手掴みで

春雷や見知らぬひとと言かはす

残雪の磐梯連山曇りなし

無口なる息子と分かつ柏餅

風のように

用あって草津3号自由席に風のように一人乗り込む

髪を背にながし何から解かれたかサンダル軽く下車するホーム

目印の「かりん」誌ふくろに入れて持つ改札口にちかづくまでは

時刻表たちまち調べ無駄のない友は旅好き八十歳とう

名のみ知るひとに会うと改札口に数秒みつめ笑みの零れる

豊子

香り届きぬ  松岡尚子

抜け毛多き髪の悩みに大丈夫と励ましくるる美容師のひと

道路下の梅に気付けり夜の闇に白く浮き立ち香り届きぬ

独り身に馴れし此の頃いつの間にわがままになり短気にもなる

たっぷりの大根おろしにポン酢かけ焼き肉食べれば不機嫌なほる

綾子

心に留まった歌と歌評 田中倭文子さん作品

病む夫を窓辺に寄せて月を見る昨日より一日老いたるふたり

A    一読して夫君を介護される姿が目に浮かび胸の詰まる思いです。長い歳月を
共に重ねてこられた御夫婦が寄り添い月を眺めて、どんな会話をなさったので
しようか。私は脳梗塞のため失語症となった夫と二人暮しです。力まず明るく前
向きにと思いつつ反省の毎日なのです。(吉崎ハツ子氏)

B   主人は大腿骨骨折の手術後、車椅子の生活となり寝たきり状態で再手術を待つ
日暮しですが高齢なので案じています。日日衰えてゆく主人を見るのは辛く過ぎ
てゆく日々が恐いですが、今の二人にとって今が一番若い時なのだと思い返して
張り切って明るく毎日を過ごすよう努めています。(作者)

C   すでに、素材も技法も幾多の先例があると思いながらも、夫婦の情愛をこのよう
な形で示されると素直な気持ちで採らざるを得ない。A評は自分たち夫婦も似た
状況であることに触れ、心情的な評を寄せた。作者は下句で「昨日より一日老い
たるふたり」と詠みながら自解では「二人にとって今が一番若い時なのだ」とする
これは「今を一番幸せと感じていたいという作者の願いである。(小嶋一郎氏)

歌誌「コスモス」(2006-5)より

私や弟妹にとってどのように年を取り死を迎えるのかは常に心の隅にある年齢になって
しまった。娘3人は短歌を弟は俳句を作っているが老後の歌はなかなか歌いづらいもの
がある。思ったことを口に出すのは本当のことでも作品としては詠みたくない。それは人
の作品についても同じである。この作品を読むとハッと気づかされるそして豊かな気もち
がわいてくる特にどうという特別なことではない。それがとても心に沁みるのである。

綾子

馬場あき子選  短歌研究5月号

故郷へ帰るすべなし吾を背負い祖母が歌ひし琉球古謡

祖母の背で不安といふを知り染めぬ引揚者に吹く基隆の風

泣くことは安らぎでした引揚者家族の長女三歳のわたし

ああー泣けば泣いてもよいと祖母も泣く引き揚げて三重の山道を行く

三線のリズムに一人踊りでて次々踊るも馴染めざるまま

綾子

すずめ

最近 環境が悪くなったのかどうか原因不明の不審な出来事がよくある。うさぎの死

カラスの死 すずめの死・・・・。

最近雀がいないという気がしてメールしたらそうでもないですよ。いますよ。少し安心。

今日病院にいったら母が「あらっ」と嬉しそうにしてでもすぐ帰るのでしょうという目もしていた。ここのところ弟妹も疲れていて私も何だかドット疲れていて昨日も目をつぶってベッドの傍にいたのであるが眉間に皺を寄せていたらしい。

「どうしたの。何か嫌なことでもあるの。」母は少したじろいで聞いてきた。実は、母の声がうるさくてわずらわしかったこともあった。

今日はいきなり「皆が自分の事で一杯ですぐ帰ってしまうのはがまんできるけど疎まれているのは堪えられないんだ。あなただって洗濯したらまたあしたくるからねっとはいっても私の手足にはなってくれないでしょう。」 「誰の洗濯をしていると思っているの?」「とにかく私は寝ているだけで相手にされないのよ。」「お母さんもう少し小さな声で。」「私何回もそう言われるのよ。」「お父さんがこういうときにいてくれたらいいんだけどすぐどこかに行ってしまうのよ。」

父はもう30年前に死んでいるのにさずがに今日はいえなかった。しばらくすると「朝から膀胱炎みたいで気もちが悪い。ここてであっためて。」私は初め手で温めてすぐ手ぬぐいを二つに折ってあたためる。そしてお薬貰ってきてという母のためにナースステーションに行く。そこで母が朝から膀胱炎と騒いでいることを知る。母には家人が物を与えてはいけないことになっているがクスリとしてとろみをつけたお茶をいただけないかと聞いてみた。

看護士さんが膀胱炎には水分は大事ですからと母のために作って飲ませてくださった。母はすこし安心していた。「おとうさんは今日スーツを着ていったのよ。いつも軍服ばかりだからスーツがいいといったのよ。やはり軍服よりスーツの方が似合う。」

時間が来て又明日来るねというと「お父さんのスーツ見てから帰ってよ。」それはだめと思うのか「あなたは長女だからたよりにしているからね。わかっているね。」という。

皆が疲れてしまっていることが敏感に反応させていてかわいそうだった。2時間ずつ3日いくより一日ずっといた方が母のためになるのだろうか。迷いながら帰ってきた。

雀のHPがあったかわいらしいのでしばらく眺めていた。

http://kurogoma.jugem.cc/?page=0?page=28?page=1

綾子