子の投げし石は沈みて波立てり空気緊まりし神社の池に
プロの手が整へし眉わが眉と思へぬ程なり明日より仕事
ビルからビルへひよいと渡りしCMの人間のごと再就職す
いつまでの仕事となるか契約の社員となりて再就職す
心の中の整理も終わる 松岡尚子
出会いより飾りを持つを好まれずわれはひとりの平凡なをんな
受信メール送信メール削除して心の中の整理も終る
処世術苦手なる身は雑多なる世渡りの本を少しく読みぬ
短歌研究4月号 馬場あき子選 mohyo
海さかな見まほしと言ふ妹と水族館はビルの十階
短歌研究3月号 岡井隆選 mohyo
「お互いさまがんばりましょう」と書かれたる老女のはがきの文字読み取りぬ
辛らつな我への評価に疲れるがそうかも知れぬ湯のあたたかさ
短歌研究2月号 岡井 隆選 mohyo
ワクワクと貝の絵見つつシャッターを押して後知る撮影禁止
短歌研究08年1月号 岡井隆選
ネット歌会ぴったり来ぬと歩みきて高き門閉ざす中宮寺まへ
短歌10月号山の喜美枝 選 空っ風
・ 夏空に蝉の声消ゆヒロシマは八月六日八時十五分
ほたるぶくろの面持ち 松岡尚子
・ とらへ得ぬほたるぶくろの面持ちをよしと思ひて夏の野を行く
・ 防空頭巾持ちて歌会に行きしこと詠ひてあれば心緊まり来
・ 弓道の人を思ひぬ弓を引き的を狙ひて他を見るなし
・ 目の覚めて身体も徐徐に覚めゆくにみんみん蝉鳴く生の限りを
・ 走り来て歯科はあそこと再びを教へくれたりワンピースの人
入道雲 mohyo
・ 入道雲たまゆら黒きにたぢろぎぬ地震ニュースの流るる午後を
「白の時代」 空っ風
・ ユトリロの「白の時代」に迷ひ込み舘出づれば夏の陽まぶし
