童謡といふは何やら悲しくてラジオに流るる「あの子はだあれ」
初夏の古都 JUN
すし詰めの江ノ電初夏の古都を行く
短歌研究4月号 馬場あき子選 mohyo
黒々と柔き土なり人参の色あざやかに抜かれゆく見ゆ
祈るが如く JUN
寝たきりの老母なれば心にて祈るが如く話かけたり
短歌研究5月号 馬場あき子選 mohyo
曇天の昼をメジロのこゑやみて多くは留守の町内しづまりぬ
短歌研究3月号 永田和宏選
そちこちのふとん叩く音しづもりて研ぎ澄まし読む昭和史の闇
戦争で儲けし人ら闇にをり例へば満州立国のころ
若き腕の 松岡尚子
介護職に就きて働く青年の俳優への道険しくもあらん
若き腕の力強しと誉むるわれにしらたまの歯を見せて笑みたり
寂聴氏のことを語りて若やぎし熊井頼子氏逝き給ひたり
書けずをるなり 松岡尚子
記録簿に『帰宅願望あり』と書くグループホームに過ごすその人
時折にふいに泣く人記録簿に『感情失禁』とは書けずをるなり
トマト入りのオムレツ作る入居者の真剣な目つき主婦に戻りぬ
短歌研究2月号 永田和宏選 mohyo
真夜中のいびきのあひ間に聞こえくる世界の天気に旅の日思ふ
ジャコバサボテン 松岡尚子
一瞬をバイクが過ぎぬ夜の更けて歌作らんと静かに居るを
残酷に過ぎゆく時間ベランダのジャコバサボテン花咲かせたり
「うるさいなあ』 と思ってしまふ注意され説教されて叱らるるとき
