介護付きマンシヨンの中清掃をすればなつかし介護の仕事
焦げ飯にぴったりの味ビビンバを話題となしてタイムカード押す
古びたる本を手に取る『高瀬舟』短編なれど印象深し
秋扇 JUN
湯煙の鏡を拭ふ夜長かな
午後の日やひとりで摘まむ黒葡萄
伏せし本開きしままの秋扇
ひとはみな星屑なりし天の川
苦瓜の葉の触れ合ひて薄日透く
短歌研究9月号高野公彦選 空っ風 mohyo
ひめゆりと健児の戦死者追悼す創作舞踊の「沖縄散華」
もの言うて若き女(め)泣けば男らの吾が泣かせしとふ
微妙な正義
短歌研究8月号高野公彦選 mohyo
生き生きとわれを呼ぶごと栄西展掛け軸の柿六個描かれ
知識ある象徴なるや栄西の頭の形四角く高し
短歌研究8月号高野公彦選 空っ風
春眠は暁に至らず夜半目覚め桜花を散らす雨音を聴く
触れ回る太鼓の響きは夏場所を告げて墨田の川風に消ゆ
短歌研究7月号高野公彦選 空っ風
鬱々と家に籠もりて一日昏れ桜明かりの真間川歩む
葉桜の春の名残りの法華経寺母待つベンチへ幼子
走る
短歌研究7月号高野公彦選 mohyo
柿六個無造作に置かれ柿色が貧しき部屋を豊かに変へぬ
集落の家々に実る柿ありて採る人なきまま夕暮れていく
短歌研究6月号馬場あき子選 空っ風 mohyo
・若き日に勤めし銀座の百貨店セピアの写真にモガの叔母をり
・親しまれだるまさんと言われゐし是清の笑顔孫ひざに抱き
短歌研究5月号馬場あき子選 空っ風 mohyo
・忘れゐし家紋の文様〈抱き茗荷〉墓碑に確かむ彼岸中日
・逃げていく二月と言ひしがなかなかに歌できぬまま膝痛の沁む
短歌研究4月号馬場あき子選 空っ風 mohyo
・教え子のイガグリ頭の少年も六十路を歩み共に酒酌む
・急死せし連絡受けて茫とゐる障子に梅の木の影は引く