・息つづく限り般若心経息つぎはそれぞれにとふ僧の声太し
短歌研究1月号永田和宏選 空っ風
・「いま、秋」と雑木林に照るもみじ忍野八海目ざして歩む
短歌研究1月号永田和宏選 mohyo
・ゆるやかな放送の声を遠く聴く「はやくおうちにかえりましょう。」
短歌研究総合年刊歌集 mohyo
・柿六個無造作に置かれ柿色が貧しき部屋を豊かに変えぬ
・生き生きとわれを呼ぶごと栄西展掛け軸の柿六個描かれ
・知識ある象徴なるや栄西の頭の形四角く高し
短歌研究11月号佐々木幸綱選 空っ風
腐葉土を押し上げ半身這ひ出してギギュッと殻脱ぐツクツクボウシ
短歌研究11月号佐々木幸綱選 mohyo
来なければ気づかぬ花火の消煙の夜風に白く流れ消え行く
hyaraさんが週刊新潮 新々句歌に掲載されました。
海亀のように背中がかたいですファーと息吐く楊整体師
俵 万智氏の評
私自身もそうとうな肩こりなので、マッサージや整体の先生から、さまざまな
表現を聞いてきた。「岩のよう」「指が入らない」「鉄板」「ガチガチですね」等など。しかし楊体師の「海亀のよう」はすごい。すでに筋肉ではなく殻の域に達して
いるのだから、まことにダイナミックな比喩だ。「かたいです」は、ちょっとぎこちな
い日本語で、中国人の先生っぽさを、うまく出している(ただしくは「かとうござい
ます」)。『鳳凰の花』(平成二十六年・短歌研究社)
昭和37年19歳のころ大学文芸誌投稿作品 mohyo
灰色の雲徐々に徐々に集まりて視界にゆるる
白きおいらん草
亀裂する雲間より見ゆる橙色のメッキの月は
マヌカン照らす
人居らぬ教室の中黒板にかきなぐりの文字
ありて静けし
出生の秘密を知らず育ち来し混血児K君
美しき瞳もつ
ポツポツと音は切れつつ曲となる白き鍵盤に
母の手ありて
ユニホームの赤き色もよしポーランドの選手団今
我が前を行く
理由なき憂いもあるか水たまりの雲見つめつつ
友待つひととき
疎ましき日曜の午後一人居て五月雨の音を
あらためて聞く
漏れさせる光をかへす蜘蛛糸のやはらかくして
意外に切れず
えびがにが片手をあげる恰好(さま)なしてノッコリノッコリ
道を横切る
隆起せし胸誇るごと雑踏に女たたずむ夜の立川
短歌研究10月号佐々木幸綱選 空っ風
一葉の生計しのべり路地裏に本郷菊坂巡る夏の日
対岸の灯りは夜露に朧ろなり葛西臨海夜間歩行
短歌研究10月号佐々木幸綱選 mohyo
死にし赤子の水葬ありて鳴る汽笛こぞりて泣きぬ引揚船に