短歌研究8月号高野公彦選    空っ風

ルーブル展〈風俗画〉とふ人々の日常を描きし西洋の絵師
フェルメール写真タッチに描きたる「天文学者」の前に佇む
陶酔といふ日常をテーマとし白き胸をばあらはに描く
若き母、乳房ふふませる「聖家族」ほのかな灯りに安らぎを描く

如何なる未来待つ       JUN

・老木は天に茂れり雲の峰
・水着着て肢体如何なる未来待つ
・見え過ぎぬことにも慣れてサングラス
・のろまでも元気なら良し百日紅
・ソーダ水ジェスチャーゲーム賑やかに

愚直に    JUN

・ 風渡る里や愚直に穂麦立ち
・ 古民家の軒も明るいハナミズキ
・ 病院の薬の嵩や菜種梅雨
・ 花未だ色衰えぬ葉陰かな
・ 天が下ひと夫々の更衣

亀の子が    JUN

・ 鎌倉や鎌足塚のジャガの花
・ 亀の子が運動場を渡りをり
・ 剪定や日々の生活下に見て
・ 万緑や京に和服の異邦人
・ 母の日の夕日間近に富士見坂