短歌研究1月号高野公彦選      mohyo

バス揺れて白山連峰遠く見ゆ風の盆踊りさあ今夜から
雪洞(ぼんぼり)に書かれし恋うたさりげなく切なくありて風の盆うた
片足立ち斜めに両手広げたる男踊りの静かで強し
胡弓の(ね)三味線(しゃみ)と融けあひ進みくる風の盆踊り最後の夜を
風の盆見あぐる夜空昔より変わらぬ星々帰路のバス待つ

秋の声     JUN


・三線の旋律哀し紅葉舞ふ (病の姉へ)
・夜の森の陰を満たすや秋の声
・翳りなき金秋の空賜りし
・終活の芸術論や冬はじめ
・木枯らしや生まれる不幸生む不幸

ベンチに座る     からっ風

やはらかき春の陽浴びて弘法寺のベンチに座るはひととき愉し
人気なき弘法寺の杜の樫の木に何を言ふらむカラス啼きをり
弘法寺の伏姫桜を見上ぐれば空には高く小さき飛行機