バス揺れて白山連峰遠く見ゆ風の盆踊りさあ今夜から
雪洞(ぼんぼり)に書かれし恋うたさりげなく切なくありて風の盆うた
片足立ち斜めに両手広げたる男踊りの静かで強し
胡弓の(ね)三味線(しゃみ)と融けあひ進みくる風の盆踊り最後の夜を
風の盆見あぐる夜空昔より変わらぬ星々帰路のバス待つ
短歌研究1月号高野公彦選 からっ風
秋場所を告げる太鼓は風にのり胸おどらせる両国の町
場所入りの関取衆に群がりて声上ぐる児等に秋の陽やさし
江戸博の七階茶寮にくつろげりビルの狭間に隅田川光る
短歌研究11月号佐々木幸綱選 mohyo
・腹見せてピョーンと跳ぶ蝉捕まえぬ我よりあるな体力声量
空高く澄む からっ風
・一合の昼餉の酒に転た寝す八月十五日の空高く澄む
秋の声 JUN
・三線の旋律哀し紅葉舞ふ (病の姉へ)
・夜の森の陰を満たすや秋の声
・翳りなき金秋の空賜りし
・終活の芸術論や冬はじめ
・木枯らしや生まれる不幸生む不幸
最後の幇間 からっ風
米七のイキとイナセな座敷芸最後の幇間、江戸文化を伝ふる
短歌研究10月号 佐々木幸綱選 mohyo
原始より装ひするは人のみと思ひて読みぬきものの文化
ベンチに座る からっ風
やはらかき春の陽浴びて弘法寺のベンチに座るはひととき愉し
人気なき弘法寺の杜の樫の木に何を言ふらむカラス啼きをり
弘法寺の伏姫桜を見上ぐれば空には高く小さき飛行機
微笑み からっ風
戦後期のやさしき祖母の微笑みは軽度の認知症とおぼしき
人けなき庭 からっ風
雨上がる手児奈霊堂昏れゆきて人けなき庭に枝垂れ花咲く