「頼むよ」と亡き義母の声入れ歯取り笑む夫の口優しさ増せば
夏空に向く NAOKO
二葉づつ蔓は伸びゆきマンデビラのピンクの花が夏空に向く
焼き鳥の煙流れて模擬店のビール売れゆく盆の祭りに
短歌研究5.6.7.8月号
5月号
春の雲ふわりと浮かびわが影を踏みつつ帰る幼き日のごと(米川千嘉子選)
6月号
七十四歳「ブルー・シャトウ」の歌声に腿上げ手振れば青春のわれ(米川選)
7月号
指先の力弱まり丁寧に切り口見つけ菓子袋開く(永田和宏選)
老木の樹皮押し破り咲く桜とどまり見つむ一人遅れて(永田和宏選)
秋日和 からっ風
秋日和二等空佐の教え子はけふ宮中に勲章を受く
ドトールのコーヒー啜り妻を待つ夕餉の惣菜荷物もつため
印象派ゆずりのタッチと明るき色彩(いろ)はゴッホの自画像細長き顔
晴嵐わたる比叡山(ひえい)の十五キロはるか眼下に近江の海(み)見ゆ
花花花 JUN
サハラよりライン届くや桜餅
櫓を漕ぐや水面に迫る花花花
春愁や城石垣の野面積み
花冷えや黙々と行く旅の僧
鳥帰るかリヨンの音に送られて
短歌研究4月号 米川千嘉子選 mohyo
まっすぐに吾の思ひ告げ太極拳すればゆるみて足裏ぬくしも
短歌研究3月号 高野公彦選 mohyo
「体験に来よ」と孫呼ばな15年ぶりに開けたる掘り炬燵なり
金星と下限の月を見上げをりこの今誰の仰ぎてをらむ
炬燵ゆ眺む からっ風
幼少期吾を気遣いくれし姉表情少なに今車椅子
はや冬至真紅の山茶花柚子の黃に夕日の届くを炬燵ゆ眺む
短歌研究2月号 高野公彦選 mohyo
独り座す老人多し駅のカフェ一人の時を楽しむ顔顔
食パンと玉ねぎ牛乳買えば良しもう少しカフェで一人本読む
風の盆歌 からっ風
灯を消して窓より月を見つつ聴く越中おはら風の盆歌
おだやかな二百十日を迎えむと祈る祭りの風の盆歌