夏空に向く  NAOKO

二葉づつ蔓は伸びゆきマンデビラのピンクの花が夏空に向く
焼き鳥の煙流れて模擬店のビール売れゆく盆の祭りに

短歌研究5.6.7.8月号

5月号
春の雲ふわりと浮かびわが影を踏みつつ帰る幼き日のごと(米川千嘉子選)
6月号
七十四歳「ブルー・シャトウ」の歌声に腿上げ手振れば青春のわれ(米川選)
7月号
指先の力弱まり丁寧に切り口見つけ菓子袋開く(永田和宏選)
老木の樹皮押し破り咲く桜とどまり見つむ一人遅れて(永田和宏選)

秋日和      からっ風

秋日和二等空佐の教え子はけふ宮中に勲章を受く
ドトールのコーヒー啜り妻を待つ夕餉の惣菜荷物もつため
印象派ゆずりのタッチと明るき色彩(いろ)はゴッホの自画像細長き顔
晴嵐わたる比叡山(ひえい)の十五キロはるか眼下に近江の海(み)見ゆ

花花花    JUN

サハラよりライン届くや桜餅
櫓を漕ぐや水面に迫る花花花
春愁や城石垣の野面積み
花冷えや黙々と行く旅の僧
鳥帰るかリヨンの音に送られて