歳末の〈福引〉なつかし振鈴の音今はポイントの倍々セール
短歌研究3月号高野公彦選 mohyo
半年後楽しみと言われ独り言ポツリと聞こゆ「生きてるかな」と
隣席の若きと老女のはずむ声優しさ満ちる老女に学べり
2月の俳句 JUN
二十四の瞳も見しか瀬戸の春
浅春の波寄す浜の砂絵かな(瀬戸内海燧灘)
七八五段金毘羅宮に春の雪
青春の微熱の如し春の風邪
襟立て二月の昼の都電かな
子猫 NAOKO
今もなほ文筆活動続けゐる95歳の寂聴さん
階段を叫びつつ来る子猫ゐて4階までを足早に行く
短歌研究2月号高野公彦選 からっ風
太古より数多の民族興亡す〈新疆ウイグル自治区〉よ安かれ
短歌研究2月号高野公彦選 mohyo
見下ろせば狭き土地なり奈良盆地囲む山々の稜線穏やか
短歌研究1月号高野公彦選 からっ風
頂上を雲に隠して春の富士花霞みたり忍野八海
やがて来る雨の匂ひに急ぎ足朝霧高原の枯野横切る
短歌研究1月号高野公彦選 mohyo
ふらつきて枯葉うず巻き吾を回る木枯らし一号恐ろしきもの
初不動 JUN
冬空やゼームス坂にレモンの碑(レモン哀歌)
年玉やはにかみ両手揃へる子
若人の笑顔眩しき初不動
飼い犬の遠吠え止まぬ寒の入
待春の植木の鉢は古火鉢
19歳のときのうた mohyo
漏れさせる光をかへす蜘蛛糸のやはらかくして意外に切れず
灰色の雲徐々に集まりて視界にゆるる白きおいらん草
亀裂する雲間より見ゆる橙色のメッキの月はマヌカン照らす
人居らぬ教室の中黒板にかきなぐりの文字ありて静けし
出生の秘密を知らず育ち来し混血児K君美しき瞳もつ
ポツポツと音は切れつつ曲となる白き鍵盤に母の手ありて
ユニホームの赤き色もよしポーランドの選手団今我前を行く
理由なき憂いもあるか水たまりの雲みつめつつ友待つひととき
疎ましき日曜の午後一人居て五月雨の音をあらためて聞く
えびがにが片手をあげる恰好(さま)なしてノッコリノッコリ道を横切る
隆起せし胸誇るごと雑踏に女たたずむ夜の立川