2月の俳句       JUN

二十四の瞳も見しか瀬戸の春
浅春の波寄す浜の砂絵かな(瀬戸内海燧灘)
七八五段金毘羅宮に春の雪
青春の微熱の如し春の風邪
襟立て二月の昼の都電かな

初不動         JUN

 
冬空やゼームス坂にレモンの碑(レモン哀歌)
年玉やはにかみ両手揃へる子
若人の笑顔眩しき初不動
飼い犬の遠吠え止まぬ寒の入
待春の植木の鉢は古火鉢

19歳のときのうた      mohyo

漏れさせる光をかへす蜘蛛糸のやはらかくして意外に切れず
灰色の雲徐々に集まりて視界にゆるる白きおいらん草
亀裂する雲間より見ゆる橙色のメッキの月はマヌカン照らす
人居らぬ教室の中黒板にかきなぐりの文字ありて静けし
出生の秘密を知らず育ち来し混血児K君美しき瞳もつ
ポツポツと音は切れつつ曲となる白き鍵盤に母の手ありて
ユニホームの赤き色もよしポーランドの選手団今我前を行く
理由なき憂いもあるか水たまりの雲みつめつつ友待つひととき
疎ましき日曜の午後一人居て五月雨の音をあらためて聞く
えびがにが片手をあげる恰好(さま)なしてノッコリノッコリ道を横切る
隆起せし胸誇るごと雑踏に女たたずむ夜の立川