友どちへイナモミ飛ばし遊んだ日
柿干すや日差しあくまで柔らかき
人の世の吐息の如し鱗雲
宴会の書状冬めくポストへと
仔犬連れ歩く小径も冬めきぬ
女たちの子守歌 みなみ恋し ふるさと
友どちへイナモミ飛ばし遊んだ日
柿干すや日差しあくまで柔らかき
人の世の吐息の如し鱗雲
宴会の書状冬めくポストへと
仔犬連れ歩く小径も冬めきぬ
秋ふかむ上野の森の美術館「フエルメール展」に人は集ひ来
おだやかな光に包み日常を詩的に描くヨハネス・フエルメール
やはらかき光の部屋に「牛乳を注ぐ女」と題す油彩画
水張田の光まぶしく目を閉じてまた目を開けて車窓に揺らる
家族らと共に歩みて墓参する段差の所は支へられつつ
樹木希林死のニュース見つむ台湾で同年同月生まれし吾なり
見張田の光まぶしく目を閉じてまた目を開けて車窓に揺らる
家族らと共に歩みて墓参する段差の所は支へられつつ
床の間に積みし書籍を処分して和室の趣戻せとふ妻
冬の日の障子の白は眩しかり机の向きを変へて書を読む
庭木々の大きくたわみ横なぐりの雨強さ増す家族待つ夕
白桔梗加賀の茶人の佇まい
朝霧や木造橋の向かうより
ひと日終へひと日は速し温め酒
松手入れ枝葉に透けて青き空
身に染むや古き映画の弾む聲
独居する女性は病みて酸素ボンベ引きつつ階段上りて行けり
電子辞書買いたし店に幾たびも足を運べどまたも戻り来
歯が抜けし寂しさなどは詠うなよ自らにいう豆腐たべつつ
言の葉は君のくちより発語され暗示のごとく寒椿咲く
娘言う「セットにしようトーストに卵のサラダも付くからね」
CMの中味難解家に居る娘に聞けば(au)と応えぬ
ハンガーに掛れるTシャツ幸せの象徴に見ゆまた歩きたし
白雲の一部と見えし白き月雲の流れて静かな月光