奥村晃作の歌集「八十一の春」を机上に広ぐ吾も八十一歳
草苗田の道 NAOKO
亀のごと歩み来たりぬ古希過ぎて新たな一歩水車よまわれ
顧みて汗と泥んこ母子家庭坂こしわれに今野ばら咲く
夕顔は面臥すごとく翳り見せ早苗田の道に風を受けおり
短歌研究4月号高野公彦選 mohyo
厚着して袖に手ちち”めカフェ目ざすまてよ寒いが春風まじる
母の歌 短歌研究2月号高野公彦選 mohyo
本棚に置きしままなる亡き母の歌読み返し胸高まりぬ
母の歌素直で優しき眼持ち母の傍へにまた居る思ひ
そよく風 JUN
そよぐ風滝より生まれ流れ来し
鯖漁の灯火遥かに夜の帳
あかきソファ NAOKO
黒髪と真紅の薔薇を思わせてあかきソファが軽トラで去る
最後まで凛としていた上階の酸素ボンベを引く女逝く
紅白のどちらが先かと友は聞く梅の蕾よ風渡りゆく
短歌研究2月号高野公彦選 からっ風
浅草の地に根ざししかニューオリンズ・ジャズコンサートに今年も集ふ
聴衆を巻き込み奏す曲目はサッチモ歌ひし『聖者の行進』
短歌研究3月号高野公彦選 mohyo
cdを毎晩聞きつつ熟睡し今朝も夫とラジオ体操
寂しさ NAOKO
「父母の寂しさの上にありし幸」今にし思うと姉は告げたり
不協和音聞かさるるごと星空に「広告」を出す人工衛星
「わざわい」の漢字一文字平成の御代は終わりて新春来たる
花束 豊子の短歌
戻りたい人生の場所はどこなのか小さな花束置きたいけれど
またひとり舞踊仲間はふるさとへもどる晩年島唄うたう
昨晩の宴のあとのおすそわけ不死鳥の咲く花束いただく
ミスばかり緑のみーで枝を打つ「柳」踊るに歳がなんなの