愛らしきパンダの親子見るごとし胡座「あぐら」の中に子を抱く母
福音を聴きて育ちぬ打たれたら打ち返せとはついに聞かざり
驟雨過ぎ路地に落ちたる葱一本行き場のなくて白骨のごと
女たちの子守歌 みなみ恋し ふるさと
愛らしきパンダの親子見るごとし胡座「あぐら」の中に子を抱く母
福音を聴きて育ちぬ打たれたら打ち返せとはついに聞かざり
驟雨過ぎ路地に落ちたる葱一本行き場のなくて白骨のごと
新元号 心高ぶり何びとも新入生のごとく待ちをり
洞窟で見つからぬやう母親が子の首しめし沖縄決戦
殺されし子らとわれとは同年代沖縄思ひて夏日浴びをり
ゆるやかな時を過ごすや竹団扇
静けさや海に臨みて雨の薔薇
時の日に岬の鐘を打ちてみる
洋館に歴史の重み黴にほふ
岩にたわわ亀の子たちの甲羅干し
「神の愛知らずに来ただけ」白鳩がつと窓にきて手紙落とせり
伸び伸びと人ら泳げり大海の光背にして老人上がり来
暮れ近き夕茜雲つかの間の光といえど芒穂照らす
千鳥ヶ淵さくら眺めて気がつけば外国人に囲まれ歩む
古希迎ふ最初の教え子M君ら吾を招きて母校訪ぬ
ふるさとに父母亡く家無く思ひでは今も聳ゆる上毛三山
お茶の水駅前広場腕組みて娘と渡る夕茜雲
豆腐屋のラッパ二度鳴り前を行く小学生も「なつかしいね」と
梅の花蕾ふくらみ今朝はもう三つも咲きて風わたりゆく