合同歌集30首より 佐野豊子

八重岳の蝶にあいたし千葉(せんよう)の言葉つやめくおきなわの雨季

雨粒に取り出すバッグの底の底沈没船のような古傘

帰還兵の父が生きた歳月と猛暑で死んだ虫がかさなる

深海に暮らすはずの釣り目鯛〉われに食われて媼になるかも

噓っぽい恋などしないハクセキレイ尾っぽダンスで求愛全開

8月の短歌      佐野豊子

食品尽き冷感タオル頸にまきスーパー目指す猛暑の道を

葉っ葉類目指す店内あれこれと選ぶはダメよウィルスつくと

歌詠まぬ義妹ふたりに助けられマスク、玉ねぎ、ジャガイモ届く

戦争を生きし母の介護病棟「お金あるの」が口癖でした

放映の95歳は生きのびて手足吹っ飛ぶ(戦時の記憶絵)

もうすぐ終戦記念日 NAOKO

軍人の教育を受け戦いし父の価値観戦後くずれぬ

軍帽の内側に母の写真秘め戦いし父遺品にて知る

新しき考え方には乗り切れず金儲けには疎き父なりし

食後には好みて子らに歌いくれしローレライの曲今も心に

糸満市のひめゆりの塔映るとき沖縄を思う旧姓なれば

村会議俳句    からっ風

村会議とはからっ風が日本近現代史講座の講師を務めた企業の方々の会である。村会議のメンバーに教え子がいて依頼されて3回にわたって講義し、終わってから会に誘われて月一度の勉強会で学ばせていただいております。

5分前精神信用の第一は時間厳守。約束を守ることである。信用はイコール学歴や家柄ではない約束の時間に遅れる人に信用はあり得ない。というまじめな方々の仲間にいれていただきはじめは短歌をだしていたが仲間として俳句を出してくださいと言われ今学ばせていただいています。

初春を 寿ぐ(ことほぐ)朝の 日本晴れ

眠りたる 街の静寂(しずけさ) 冬の月

軒下に 夕日眩しき 吊るし柿

宮参り 幼子の手には 千歳飴

熱燗を 干して年の瀬 鐘を撞く

やはらかき 朝の光に 萩の露 

紅葉狩り 平安貴族の 世界(よ)を偲ぶ

手術後の 妻見舞ひたる 冬の朝

如月の さむき月かげ 隅田川

鴉を詠ふ  NAOKO

降る雨に鴉階下を歩みをりただ単純に餌を求めて

雨中の路面に翼濡らしつつ鴉は歩む左右にゆれて

つゆの雨翼重たき鴉居て嘴着けぬ雨水に寄りて

ゴミ置き場の塀より空へ飛ばむとす鴉は生きて翼広げて

ゴッホ描く「カラスの麦畑」黄の畑に群れ飛ぶ鴉最後の作なり

蕨餅   JUN

古都巡る足の疲れや蕨餅

籠りゐる我が家に届く初音かな

たんぽぽや子供のゐない通学路

揺蕩(たゆた)ふて花と吾が身の風任せ

亀鳴くや南極旅行の写真集