誰からも遠ざかりつつ火のついた浮雲のよう足暖める
断罪をくだして樫をかなします魔物めきたりわたくしの声
あけぼのの目覚めの鴉かわかわと幼いままに濁声に鳴く
意味もなくなつかしくなる向日葵の茎の太さに真夏の昭和
女たちの子守歌 みなみ恋し ふるさと
誰からも遠ざかりつつ火のついた浮雲のよう足暖める
断罪をくだして樫をかなします魔物めきたりわたくしの声
あけぼのの目覚めの鴉かわかわと幼いままに濁声に鳴く
意味もなくなつかしくなる向日葵の茎の太さに真夏の昭和
みずからを海蛇という宮古人海人の娘仙台に住む
火事のよう西雲は燃え声はなし華ある舞いを魂の舞を
脇役の茶の花でいいイヤ違う二つ心に青月あおぐ
誰かいう少数族のアボリジニー熱湯のごと人寄せ付けず
対岸の牛舎に届け似た声で
梅雨だつゆだと牛蛙鳴く
(小見山みよこ)
原作
対岸の牛舎に届け似た声で梅雨に入ったと牛蛙鳴く
ひゃら
梅雨にハイッタと読まれましたね。
作者
四句目が気になっていろいろ考えたのですが。
ひゃら
歌を愉しむチャンスです。リズムよく鳴かせたいですね。
作者
もう梅雨だなと私が思ったのです。
ひゃら
「梅雨だつゆだ」はいかがですか。
作者
それがいいです。それにします。
魔のようなリハビリ病棟母の足二回脱臼そして大けが
全身が他人になるほど輸血されICUに母生きている
ざらにある転落事故とう大天(おおあま)の神々ならび詫びてはいるが
「うう寒い」背後の窓に日はのぼり咲くよ沖縄明けもどろの花
滞るお礼の手紙まだ書けず花の春はや鬱に苦しむ
海水が盛り上がりくる恐怖感ちいさな島は八方が海
惜しげなくやんばるの樹々切り倒しつくられし道路走るも
われら
沖縄につつじ山あり土匂う本土の土を盛りて咲かせる
花びらの路上ダンスは愛らしく
ひとひらひとひら風に立ちおり
(ふみえ)
原作
花びらの路上ダンスは愛らしく風に吹かれつも容姿保ちて
(アドバイス)
容姿保ちて う〜ん気持ちはわかりますが。
花びらのダンスは素敵な場面ですね。そこをもうすこし具体的に歌いましょう。
作者
アスファルトの道路なので、花びらの1枚1枚が風の吹くたびにワーって立つので、夢のようでした。
ひゃら
バスの窓から見たのですね。花びらが立つは、飛び立つのですか。
作者
いいえ、花びらが立ち上がりました。
ひゃら
美しいですね。そこを歌いたいですね。
作者
ひとひらひとひら風に立ちおり
(アドバイザー略歴)
結社「かりん」所属
歌集『炎の藻群』『ていだ太陽』
清瀬短歌サークル講師
春萌える秩父連山ドライブの助手席にいてさみどりの腕
長瀞へおいでおいでと廃船にあふれるほどのパンジーが咲く
山いちめん芝桜咲くひつじ山日のくれどきに羊鳴くなり
春星は密かに落ちて花になる秩父連山ついに暮れたり
闇のやま赤い尾灯がいっせいに輝き並ぶ秩父街道
熱いでて枕の下に手をいれるひんやりひとり春夜を目ざめ
病臥して萎えるこころは混沌と思わぬ人をなつかしみおり
熱さがり夢さめたようしんみりと食卓により白湯いれて飲む
病みあがりあみだ帽子をかぶる部屋こんな事にも安らぐなんて
われが病み姉さん少し痩せたらし母の介護の奮戦メール
もう未来みえない日本そのはなのもっと見えない美(ちゅらさ)さ沖縄
空暗く鳥きしきしと羽搏つなりヤハウェわが神われら生きたし
なんとなく隠しもちたる裂布あり祖母の紅型木綿なれども
その山は歌の香具山その山は琉歌の神すむ恩納岳 撃つな
気むづかしい顔した爺の自転車のうしろに
ちんまり男児(おのこ)がすわる
(いちゑ)
原作
気むづかしき顔した爺の自転車のうしろにちんまり男児(おのこ)がすわる
(アドバイス)
全体に現代かなづかいなので「気むづかしき」は「気むづかしい」でもいいのでは。
情景をきちんととらえ、表現されています。
ひゃら
街で見かけた場面でしょうか。
作者
そうなんです。おかしくて笑っちゃいました。
この爺さん、すごい顔してペダルを漕いでいて、そのうしろに男のこが、それこそ、ちんまりすわっているのよね。
ひゃら
大人の気分と関係なく、ちんまり坐っている男の子が可愛いですね。すこし気をつかってるのかな。
作者
爺さんと男の子を見たとたん、この歌がすっとできました。