さざんくわは造花の如き朱色き花五輪六輪今朝も咲きをり
春の息吹 JUN
男坂超す間を春の息吹かな
梅が枝に春の膨らむ気配あり
白梅や苦労積む子の誕生樹
会釈して行き交ふ小径(こみち)春立つ日
長崎にて 春の川ランタンの灯をたたへをり
ウィルス騒動 NAOKO
ウィルスに休校になりし学童ら二月の末を荷物抱えて
飛行機雲 青空を切る日常にウィルス感染拡大したり
汚れたるマスク転がる枯れ尾花風が吹き越す土手を歩めば
枝のみの桜並木の川沿いにここかしこにぞツユクサの青
逆光に白梅の花翳りたりその一輪に暫くよりぬ
ウィルスの一日も早い収束を祈ります。
優しさ知りぬ mohyo
言葉こそ大事あなたは強いねと言われ素直に聞きてをり
濡れし肩に吹く風ありて銀座行く太極拳終へ一人の時を
東京弁冷たくきついと気仙沼の友帰りたり三十年前
青森弁語らふ男女の輝きて方言の持つ優しさ知りぬ
五絃琵琶 からっ風
ウルムチの少女奏でし五弦琵琶正倉院に伝ふ音色か
蕗の薹 JUN
春風やスワンの舟に雌雄あり
閑居にも春が来た来た蕗の薹
古希の宴しっぽく料理に春の雨
寒鯉の吾関せずと動かざる
終点と呼ばるる駅や寒夕焼(かんゆやけ)
過ぎゆくひと日 NAOKO
ザクザクと葱をきざみぬ湯気立ちて炎も見えて過ぎゆくひと日
輪になって人ら真面目に踊ってるフォークダンスは果てなく続く
市役所の福祉課の床。窓に寄る昼の気だるさ立春過ぎぬ
おあいそに小銭の袋を持ち出して姉は並べぬ店のレジにて
噴火雷初めて見つむ噴煙に縦縞光り轟音響く
短歌研究2月号高野公彦選 からっ風
春一番吹きて夕陽はビルの窓街ゆく人を眩しく照らす
早や冬至真紅のさざんか柚子の黄に夕陽とどけり狭庭の小景
短歌研究2月号高野公彦選 mohyo
曇空のかなたに見ゆる夕茜友住む千葉市思ひつつ歩む
南瓜煮て夕食楽し幼き日南瓜はいつもご馳走だった
打たれ強まる NAOKO
立ちはだかる高き柵あり大国への難民の列川のごとかりし
国と国個人と個人の喧嘩あり前者は見知らぬ敵を殺せと
黒船の時代(とき)より今に至るまで大国のもとにはためく日の丸
年齢をふいに聞かれぬ間を置きて「団塊世代」ツルっと蕎麦食う
異質なる友と交わりカチンカチンと打たれ強まる