一瞬をバイクが過ぎぬ夜の更けて歌作らんと静かに居るを
残酷に過ぎゆく時間ベランダのジャコバサボテン花咲かせたり
「うるさいなあ』 と思ってしまふ注意され説教されて叱らるるとき
女たちの子守歌 みなみ恋し ふるさと
一瞬をバイクが過ぎぬ夜の更けて歌作らんと静かに居るを
残酷に過ぎゆく時間ベランダのジャコバサボテン花咲かせたり
「うるさいなあ』 と思ってしまふ注意され説教されて叱らるるとき
後ろだて無き浮舟の幸せを老後の不安と重ね読みゆく
浮舟に つきこし人らの老後など語られず帰るもどかしきなり
暗唱の番号いとも易き故変へよと画面に注意されたり
甘みなき林檎を切りてレモン汁グラニュー糖で煮込みぬ今朝は
向ひ来るヘッドライトに浮き立て淡くきらめく穂芒の群
大雨が豪雨となりてアスファルトを打ち叩くなりレストランの前
雨あとの自転車ハンドルに坐してゐる小さき蛙を左手に受く
机の前の壁に貼りゐし折り紙の蝉三つ外す秋風吹きて
禅林寺に常に太宰が居るような・・・。墓とは不思議な力を持つなり
自らが持てるすべてのものを差し出し共に逝きたるをみなを思ふ
誘われて死なんと答ふる男ありや瞬時よぎりぬ男女の違ひ
寒卵 癌といふ字は 覚えざる
「お互いさまがんばりましょう」と書かれたる老女のはがきの文字読み取りぬ
辛らつな我への評価に疲れるがそうかも知れぬ湯のあたたかさ
フクロウの声にすばやくうずくまるエゾモモンガに孫身じろがず
冷房車 吹く風見えねシャンと立つ乙女のスカートひらひらうごく
ついに言ふ生活のことを、娘らに言ふて良かった伸び伸びねむる
うたわなとその時その場励みきて心つかれておかめそば食む