会費集金ままならぬまま〆切りの十日を過ぎて未納十軒
ノックすれど留守ゆゑ幾度も来しといふ集金袋を持ちしその人
階上の騒音何とかせよなどと苦情を持ち来る人多き団地
女たちの子守歌 みなみ恋し ふるさと
会費集金ままならぬまま〆切りの十日を過ぎて未納十軒
ノックすれど留守ゆゑ幾度も来しといふ集金袋を持ちしその人
階上の騒音何とかせよなどと苦情を持ち来る人多き団地
童謡といふは何やら悲しくてラジオに流るる「あの子はだあれ」
すし詰めの江ノ電初夏の古都を行く
黒々と柔き土なり人参の色あざやかに抜かれゆく見ゆ
寝たきりの老母なれば心にて祈るが如く話かけたり
曇天の昼をメジロのこゑやみて多くは留守の町内しづまりぬ
そちこちのふとん叩く音しづもりて研ぎ澄まし読む昭和史の闇
戦争で儲けし人ら闇にをり例へば満州立国のころ
介護職に就きて働く青年の俳優への道険しくもあらん
若き腕の力強しと誉むるわれにしらたまの歯を見せて笑みたり
寂聴氏のことを語りて若やぎし熊井頼子氏逝き給ひたり
記録簿に『帰宅願望あり』と書くグループホームに過ごすその人
時折にふいに泣く人記録簿に『感情失禁』とは書けずをるなり
トマト入りのオムレツ作る入居者の真剣な目つき主婦に戻りぬ
真夜中のいびきのあひ間に聞こえくる世界の天気に旅の日思ふ