臨席の裸足で靴を履く男足組みて止まぬ貧乏ゆすり
短歌研究8月号 高野公彦選 mohyo
大事ゆえトイレにも持ちしこの財布置き忘れたるを戻り来吾に
短歌研究7月号 高野公彦選 mohyo
初のりの息子と組んだペアヨットレース2位になりたる父の笑顔よし
となり家のもみじ葉のみどり陽に透きて追ひつめられし思ひ溶けゆく
短歌研究6月号 馬場あき子選 mohyo
税務署の庭まで並び一時間やよひの空見て納税終へぬ
新設の葬儀会場説明会うやうやしくされ無料ご膳に
短歌研究5月号 馬場あきこ選 mohyo
あの着方認められぬが息止めて國保の演技をそれそれと見し
江の電 JUN
すし詰めの 江の電初夏の 古都を行く
柳結び 短歌研究4月号 mohyo
検番の舞台にゆれる柳結び帯のしめ方昨日習ひき
否と応へぬ NAOKO
大木の陰になりたる墓を避け式までの時を陽を浴ぶ人ら
冬晴れの青空のもと姉弟が墓前にて歌ふ納骨せんと
「実の母を亡くして心がきつくないか」と娘が問うに否と応えぬ
大欅 JUN
幾山河隔てて我と初富士と
竹林の竹が粉を吹く淑気かな
冬枯れて気骨残れる大欅
光陰が貌を縁取る初鏡
「帽子似合うよ」 NAOKO
大腿部骨折の時に取り付けし金具がごろんと遺骨に混じる
花々に埋もれて眠る母の棺に声をかけたり「帽子似合うよ」と
讃美歌の曲が流れて久々に礼拝堂に入りたり我は