・一人ごといふ人この昼三人目皆ぷりぷりして車内を歩む
・人去りてリフォームつづく隣組最高齢のわれらとなりぬ
花の別れ JUN
幼子と小庭耕す暮の春
忘れ得ぬ時とめ卒業写真かな
移ろはぬもののありけり老桜
漆黒の夜空を覆ふ桜かな
雨催ひ花の別れを惜しみけり
共に見しこと NAOKO
・本読むとひとり籠もりぬテーブルに置かれし林檎のかをり立つなか
・ぬばたまの夜半に浮かべり過ぎし日に手児奈の井戸を共に見しこと
短歌研究4月号 馬場あき子選 mohyo
・夜咄の茶事始まると雁行す若きがわれの荷を持ちくるる
・蝋燭の芯を鋏で切りしとき炎の明るさ増して揺らめく
・正客の松風の音言ひしとき頷きてきく湯のたぎる音
・待ち待ちし薄茶一服いただけば手の中にある茶碗の重さ
・薄暗く炎のぬくさ静けさよこのひとときを素直にをりぬ
永遠の生命 NAOKO
・黄の薔薇のかをり思わせ星くずを描きしゴッホの「夜のカフェテラス」
・永遠の生命とは何。「永遠」に触れし生命と応えたりひとは
短歌研究2月号 永田和宏選 mohyo
・C-3が私の席と図書館に音せぬようにページめくりをり
短歌研究2012年1月号 永田和宏選 mohyo
・振り向けば夫も振り向き手をあげる今日一日をそれぞれに行く
短歌研究12月号(今年の選歌3首)
・編集学校に番匠師範師範代と職名残りてネットに学ぶ
・青空の残る夕刻立食のパーティにゐる家族思ひて
・経済は消費すること世のためとパクパク動く口を見てをり
短歌研究11月号佐々木幸綱選 mohyo
・四時過ぎの朝の空気の清らなり静かに静かに戸を開け放つ
短歌研究10月号佐々木幸綱選 mohyo
・68歳初めて持てる自室なり戦後引き揚げの夢見ずなりて