・ くさめ続く冷ゆる朝なり石油代上がると知りて暦を見上ぐ
・ 4Fのベランダに聴く児童らのブラス・バンドに校舎息づく
『長箒』 NAOKO
・長箒そつと差し出し一枚の枯葉擦れば「何よ」と落ちず
・長箒伸ばして怖づ怖づ突つ突きて一瞬驚く羽広げたり
『庭の畑』 JUN
・ 寒明けの 光到れり 庭の畑
・ 古里は野焼く焔に隔てられ
・ 團十郎逝くとも春はめぐり来る
・ 苔むして廻る水車や水温む
・ 職を辞し深く耕す庭の畑
円椅子 NAOKO
・ 美しき曲とぞ思ふ幾度も聴きたしと思ふ(別れの曲)を
・ キッチンの円椅子に坐り煮える間を口ずさみゐる君の短歌を
・ (了解です またメールする)高校の時と変はらず簡潔な彼女
静かに思ふ 短歌研究2月号永田和宏選 mohyo
・公務員でおはりし暮らしをよしとして生活(たつき)のあれこれ静かに思ふ
初御空 JUN
・ 一人居に黄昏早き冬日かな
・ 柔らかな日差し仔犬に枯芝に
・ 忘れゐし夫婦の絆南瓜切る
・ 無限へと続く紺碧初御空
・ 初夢に彼の世此の世はなかりけり
湯西川温泉 空っ風
・渓谷沿ひの崖道馬車で来しといふ亡父の湯治場湯西川温泉
ほどよく減らし 短歌研究1月号永田和宏選 mohyo
・ 職退きて10年を経ぬ賀状数忘年会もほどよく減らし
冬の夕べに (東京歌壇12月23日) 空っ風
・寒鰤をあぶり大根おろし添へ豪快に喰ふ冬の夕べに
進む他なし NAOKO
・<三つ並ぶあれがオリオン>子どもらに父が示しぬ冬の星座を
・「チェリー」とふ犬との散歩仔犬より家族となりてわが顔に似る
・今はただ進む他なしわが好むナポリタンを食べ区切りをつけよう