姉の短歌が準特選
馬場あき子選 短歌研究5月号
故郷へ帰るすべなし吾を背負い祖母が歌ひし琉球古謡
祖母の背で不安といふを知り染めぬ引揚者に吹く基隆の風
泣くことは安らぎでした引揚者家族の長女三歳のわたし
ああー泣けば泣いてもよいと祖母も泣く引き揚げて三重の山道を行く
三線のリズムに一人踊りでて次々踊るも馴染めざるまま
長谷川綾子
姉は、教師を定年退職したが、ほっとする暇もなく、母の介護が待っていた。
わたしは、姉のおかげで活動範囲がひろがった。
短歌は、姉のほうが先輩だが、結婚と仕事で短歌はながく中断した。
これを弾みに作歌活動を再開してほしい。
短歌研究3月号高野公彦選 からっ風
歳末の〈福引〉なつかし振鈴の音今はポイントの倍々セール
短歌研究3月号高野公彦選 mohyo
半年後楽しみと言われ独り言ポツリと聞こゆ「生きてるかな」と
隣席の若きと老女のはずむ声優しさ満ちる老女に学べり
2月の俳句 JUN
二十四の瞳も見しか瀬戸の春
浅春の波寄す浜の砂絵かな(瀬戸内海燧灘)
七八五段金毘羅宮に春の雪
青春の微熱の如し春の風邪
襟立て二月の昼の都電かな
子猫 NAOKO
今もなほ文筆活動続けゐる95歳の寂聴さん
階段を叫びつつ来る子猫ゐて4階までを足早に行く
短歌研究2月号高野公彦選 からっ風
太古より数多の民族興亡す〈新疆ウイグル自治区〉よ安かれ
短歌研究2月号高野公彦選 mohyo
見下ろせば狭き土地なり奈良盆地囲む山々の稜線穏やか
短歌研究1月号高野公彦選 からっ風
頂上を雲に隠して春の富士花霞みたり忍野八海
やがて来る雨の匂ひに急ぎ足朝霧高原の枯野横切る
短歌研究1月号高野公彦選 mohyo
ふらつきて枯葉うず巻き吾を回る木枯らし一号恐ろしきもの
初不動 JUN
冬空やゼームス坂にレモンの碑(レモン哀歌)
年玉やはにかみ両手揃へる子
若人の笑顔眩しき初不動
飼い犬の遠吠え止まぬ寒の入
待春の植木の鉢は古火鉢