花のように次々開く万華鏡くるくる回し心明るむ
人避ける長の子連れて平日に苺狩りせり貸し切りのごと
苺もぐ要領もありひと粒をくるっとひねりわが掌に乗せる
濃きミルクと袋渡され苺狩り初めてを来ぬ五井のハウスに
女たちの子守歌 みなみ恋し ふるさと
花のように次々開く万華鏡くるくる回し心明るむ
人避ける長の子連れて平日に苺狩りせり貸し切りのごと
苺もぐ要領もありひと粒をくるっとひねりわが掌に乗せる
濃きミルクと袋渡され苺狩り初めてを来ぬ五井のハウスに
満開のしだれ桜の紅の花右まわりに観左まわりに観る
二日前羽生七冠王挙式せし鳩の森神社鳩の鳴くなり
ゴッホ描けり青の大空黄の畑不安ただよふ曲線の教会
予想もせぬ展開見する人生の不可解故に養ふるこころ
札幌に文学館建ち特集号が送られ来しをよろこびとする
曇り日の潮来のあやめ花びらの白きを眺め紫を眺む
いち面のあやめの群れをやや離れのほほんと咲く白き
睡蓮
花韮の白さ目に沁む老い母の介護尽くせし姉の倒るる
人も街も置き去りにして万緑の山懐へ歩み入りにき
思いでを問われていたり愛深き祖母さえ忘れておりし心に
沖縄を母はかたらず存(ながら)えし命をただによろこぶ戦後
琉球はわが歌枕ほろぼされみずからほろぶたとえば心
アメリカが世界に君臨する野心ゆるすのか返せ沖縄の島
人生がすこし修正されたよう頭髪(からじ)をたばね
頂(ちじ)にゆいあげ
梅咲くや急かず気負はず凛として
桃の花吾を窺う童子あり
猛き者疾く滅びよと涅槃西風
夫の鼾高き夜半かな一人生を誤らしめし戦争を憎む
引く潮は岩くぼを急ぎ下(くだ)りゆき押し来る波と
白く揉み合ふ
打ち上げしかじめの散らふ砂深き太海(ふとみ)の磯を一人しゆくも
夢ひとつ受けたる心地水仙の球根の袋手渡されつつ
ベッド横に腰掛けふいに寂しかりいとも酷なり老孤といふは
本当に生まれて良かったと思ふかと吾子は問ひたり乙女さびたり
勝敗がすべての如き現実の人間といふを時に憎めり
老母と今年もさくら見上げつつさくら並木を去りがたくをり
大声でひとりごといひ女行く背にさくらばな幾ひらつけて
暗雲に蔽われてゐる満開のさくら眼に顕つ白白として
夜桜にこころわななくICUの酸素マスクの母を思ひて