父逝きて30年過ぐこの秋に東条英機孫の手記読む
なぜユダにばかり関心もつのかと不安の少女は牧師に問はる
女たちの子守歌 みなみ恋し ふるさと
父逝きて30年過ぐこの秋に東条英機孫の手記読む
なぜユダにばかり関心もつのかと不安の少女は牧師に問はる
風邪に臥すアンティークドールに見守られ
遠退きし日の美しき日記果つ
包装紙蒸れて鯛焼届きけり
初暦輝く余白ありにけり
読初めは「蛇笏と楸邨」床の中
梯子乗り虚空を目指し上り初む
鳶口に軋む青竹梯子乗り
一人だけ頭上に地球梯子乗り
春を待つ空堀川の野塩橋
元朝の雪の光に目覚めけり
新春の障子輝く夜明けかな
雀二羽影が行き交ふ雪の庭
手作りの餃子も並ぶ御節かな
疎遠なる人ばかりかな年賀状
駅からも病院からも野塩橋目指して渡る行きも帰りも
細糸の絡まる様の母の文字声たからかに母は詠みあぐ
帰ろうとするとき必ず目を開ける母なり帰る痛みまた湧く
梅林の木の下蔭の枯れ落葉とだえしところ雪解けやらぬ
大方の人眠りいる病室のカーテンの外より冬陽あふるる
紙のような仏桑花咲くおそろしい異変のままの師走なかばを
花のある芸人のごとむんむんと民家のさざんか百花繚乱
舞いまさる秘訣はあるかななかまど女心は冷えて花を落とせり
メサイアを聞きつつ思う「人はなぜ動物のなかで醜くいのでしょう」
乗車中たまたま隣に居合わせた老女語りぬ長男への思ひ
長男を養子に出した覚えなし息子夫婦を寂しみていふ
長男の家訪ねしが嫁の母の手料理ばかりでもてなされしと
うらわびし回転窓は次々に音残しつつ夏休みに入る
Tさんのご紹介で松村一雄先生(高校教諭)主催の
歌会に初めて作った短歌を提出。
先生からまるでフランス映画を髣髴させるものです
とお褒め頂いた作品だそうだ。
職場は台北の旭小学校であった。