梯子乗り  JUN

初暦輝く余白ありにけり

読初めは「蛇笏と楸邨」床の中

梯子乗り虚空を目指し上り初む

鳶口に軋む青竹梯子乗り

一人だけ頭上に地球梯子乗り

春を待つ空堀川の野塩橋

元朝の雪の光に目覚めけり

新春の障子輝く夜明けかな

雀二羽影が行き交ふ雪の庭

手作りの餃子も並ぶ御節かな

疎遠なる人ばかりかな年賀状

野塩橋  mohyo

駅からも病院からも野塩橋目指して渡る行きも帰りも

細糸の絡まる様の母の文字声たからかに母は詠みあぐ

帰ろうとするとき必ず目を開ける母なり帰る痛みまた湧く

梅林の木の下蔭の枯れ落葉とだえしところ雪解けやらぬ

大方の人眠りいる病室のカーテンの外より冬陽あふるる

暖冬

紙のような仏桑花咲くおそろしい異変のままの師走なかばを

花のある芸人のごとむんむんと民家のさざんか百花繚乱

舞いまさる秘訣はあるかななかまど女心は冷えて花を落とせり

メサイアを聞きつつ思う「人はなぜ動物のなかで醜くいのでしょう」

息子夫婦  mohyo

乗車中たまたま隣に居合わせた老女語りぬ長男への思ひ

長男を養子に出した覚えなし息子夫婦を寂しみていふ

長男の家訪ねしが嫁の母の手料理ばかりでもてなされしと

回転窓  ふーしゃん

うらわびし回転窓は次々に音残しつつ夏休みに入る

Tさんのご紹介で松村一雄先生(高校教諭)主催の
歌会に初めて作った短歌を提出。
先生からまるでフランス映画を髣髴させるものです
とお褒め頂いた作品だそうだ。
職場は台北の旭小学校であった。