清瀬短歌サークル

清瀬短歌サークル 2005、11,5

定員12名 現在10名 若干名 募集
講師 佐野豊子 現代歌人協会会員、日本歌人クラブ会員
結社 かりん所属
歌集 第一歌集『炎の藻群』第二歌集『ていだ太陽』

生徒さんのうた

事もなし座布団二枚の陽だまりに犬に付き合いしばしうたたね  (戸島政夫)

ふる里を捨つるがほどの夢なるに子をなし親となりてかすみぬ  (篠崎玲子)

吹き抜ける朝風やみて藤棚の風鈴そつと垂れさがりたり  (石井 孝)

鈍色の窓外見つつ聞きをりぬ介護保険法改正のはなし  (米澤繁子)

買われ来てなじめぬ亀か餌をやれば右手広げていやいやをする  (武山いちゑ)

家族って私と猫と小鳥二羽まち子とリリー、マーとケイ (井手麻千子)

長火鉢のまわりを囲む幼きわれら父が焼く餅醤油のかおり (塚本治子)

名をきけば育ててみたい金成る木大きくなると金失せるらし  (小見山みよこ)

年ごとに咲く花なのに手のひらに受けてみたしさざんかの花  (羽根花子)

豊子

モニター    坂口文江

番組の予約ボタンを押しわすれ
モニターの仕事うろたえ騒ぐ
(坂口文江)

原作
テープ入れ予約ボタンを押し忘れ最初の仕事うろたえ騒ぐ

ひゃら
大変困っている様子は伝わってきますが、
仕事は何ですか。

作者
モニターです。テレビ番組の。

作者
最初の仕事なので慌てました。

ひゃら
「最初」にこだわる気持ちはわかりますが、ほかに必要な言葉がありますね。

ひゃら
具体的に「モニター」、「番組」など入れたいです。

作者
「番組の予約ボタン」、「モニターの仕事」にかえます。

ひゃら
具体的にうたうことが大切です。

豊子

学校で 見るもの  よりえ

今回も小学5年生の詩です。

登下校のとき、また校庭や教室の窓からみた大自然のいとなみを、詩にしています。しっかり見て、発見する。詩人としてのポリシーも芽生え、自覚的です。

学校で 見るもの   小5  よりえ

朝は白い月をこの季節には見る
だから朝ちょっと早く家を出る

窓では富士山を見る
先が真っ白になって行く
夏よりもちょつと増えたなぁってくらべるのは楽しい

校庭ではすごい光を持つ太陽を見る。
まぶしくってまぶしくって。でも太陽は優しい。
私たちに光を分けてくれて
大地に光を与えてくれるのだもの。

教室の窓からは綺麗な紅葉の
山々を見ることができる。
夏は緑色一色の山を見て、冬は綺麗な三色。
赤、黄、橙。すてきな三色。

下校には夕日。
今はもう3:30過ぎに夕日がでることが多い。
その時は橙色。4:00過ぎに家の近くでは紫。
綺麗な色。空は色をもっている。

学校では勉強もだいじだけれど
発見もだいじだと私は思うのです。

切り花  佐野豊子

水そそぎ湯をかきまわしバスタブに首までつかる切り花のよう

軽石でかかとすり終え目にみえぬ命にザンブとかけ水をする

パスワード***と入力しホームページのわが部屋に行く

老魚  佐野豊子

老人は赤子ではないあの声をなんとかしてよ「お口をあーん」

寝たきりの母が指さす死者たちは天井にいて残念見えず

封筒の糊しろをつけ切手貼る何をしててもうっすら寒い

水を得た老魚そののち水底にひっそりとして尾ひれそよがす

詩 ー手ー  NANACO

今回は、詩を掲載します。
中学2年生の詩です。
自分の手をとおして自分をみつめ、ひとの温かさを感じ、自然の恵みを素直にうけとめています。
ー手ー        NANAKO
わたしの手はなんでも知っている
わたしの好きなところも
わたしの落着く場所も
わたしの手はなんでも知っている
大切な人の手の温かみも
そよ風のやさしさも
だからわたしは
わたしの手にだけはウソはつけない
どんなに強がってみても
どんなに隠してみても
ぜったいにばれてしまう
わたしの手はなんでも知っている
四季の移り変わりや太陽のあたたかさ
命あるものの大切さや自然のやさしさ
わたしの手はわたしのいちばんの理解者
だって 生まれたときからの
長いつき合いだから

素顔  佐野豊子

青空に溶けゆくように逝きたもう礼拝奏楽者九十三歳

素顔にてたった一度の死化粧まじまじ見れば微笑まんか

ひとはみな塵にかえる 神の霊やどるからだに寿命のあれば

病気せず百までいきる人あれどベッドの母にまなぶ忍耐

コバルトブルー  羽根花子

夕空をコバルトブルーに染め上げて
台風の雲走りぬけたり  (羽根花子)

原作
台風の雲走りぬけ夕闇をコバルトブルーに染め上げて

ひゃら
「染め上げて」は5音。字数が足りないですね。

作者
「コバルトブルーに染め上げて」と一息によみます。

ひゃら
それでは、上下句をいれかえてみましょう。

ひゃら
台風の雲が去ったあと、何が、夕闇を染め上げているのでしょう。

作者
コバルトブルーの空が。それはそれは美しかったのです。あ、空がいりますか。

作者
夕空をコバルトブルーに染め上げて台風の雲走りぬけたり

作者
上下句を入れ替えてみるのもいいですね。

眠たくて  佐野豊子

神の御手しずかに母をつつむらん周りの人をだんだん忘れ

雲うかぶここはどこかなちんちろりん虫鳴く夜の新秋津駅

眠たくて脳天の上の三日月にすみぬるような黒い横雲

ちんぷんかんぷん  佐野豊子

いつか死ぬ夜のかがやきか野花より発光したり蛾のりんぷんは

ひふ癌のがんこに消えることもなし母のかたほほ黒点育つ

終生をささえつづける弟(おとと)さえ母は花木瓜ちんぷんかんぷん