歴史散歩   からっ風 

尋ね来し歴史散歩は梅雨晴れの松戸本土寺あぢさゐの寺

「江戸名所図会」(めいしょずえ)行徳舟の水駅(みずうまや)ばせお・一茶ら遊客多し

べか舟の今はなつかし浦安の埋立の地にディズニーランド

花街に伝えこし芸廃れゆくイキとイナセな江戸のかっぽれ

七福神間合いをとりて恵比寿さま新春散歩の12キロゆく

行徳舟  江戸期、日本橋小網町から小名木川・新川の流れに乗り行徳(市川市)まで往復した定期便の舟。乗客以外に塩・魚・野菜などを運んでいた。また成田山や寺町行徳への参詣客でにぎわった。

水駅(みずうまや) 「すいえき」とも呼ばれ河川の船着き場のことである。

べか舟  山本周五郎はその著『青べか物語』の舞台である浦安のべか舟について作中で『べか舟は一人乗りの平底舟で貝や海苔の採集に使われた小さな軽快形の舟で外側を青ペンキで塗り・・・』と。

ばせお  芭蕉のことである

秋茄子  JUN

久々の文出しに行く良夜かな

青果店夜長の町に煌々と

ふと我に返れば虫の鳴き初めて

秋茄子に日の集まりてをりにけり

跡継ぎの居らぬ果樹園よりの桃

秋茄子は嫁に食わすなともいいますが最近ぬか漬けにして食べています。mohyo

八十路の坂道   からっ風

母の背で〈万歳!!〉叫びしとほき日は戦勝祝賀の行列の中

義母遺(のこ)す歌集『ポポの木』ひもとけば妻との若き日〈昭和〉を詠ふ

ジャズ喫茶〈新宿ACB(あしべ)〉のステージに坂本 九(きゅうちゃん)の歌妻とのデイト

反戦デー蝟集せし日の居酒屋を探す八十路の新宿の街

コロナ禍の八十路行く身の散歩道 八幡の宮居 弘法寺の坂道(さか) 

第26回古今伝授の里短歌大会ペアの部

ペア短歌の部で入賞(大和地域公民館長賞)をいただきました。

「古今伝授」とは歌道伝授の一つ。中世、古今集の語句 訓話 注釈

を師から弟子に伝え授けたことです。特に岐阜県郡上市一帯に伝わる

地域を総称して「古今伝授の里」と呼ばれています。

夫/長谷川祐次 紀伊国屋(きのくにや)書店の前で待ち合せ新宿駅ゆ小走りで行く

妻/長谷川綾子 若き日の姿と変わらぬ走り方手を振り笑顔の夫(つま)とし思ふ

妙な作品ですがいつも聖句は心にNAOKO

ヒトの耳むかしは尖っていたときく曲がりてまるき我が耳を思う

おもしろく眺めていたり水かきと五本の指と伸びしこの爪

眼と鼻と口と内臓動物はヒトと共存なし得るか否か

人間は霊長類でトップなのか焼かれしコアラ猛火の山火事

大海に飛沫を上げて着水するシャチの躍動海に消えたり

合同歌集30首より 佐野豊子

八重岳の蝶にあいたし千葉(せんよう)の言葉つやめくおきなわの雨季

雨粒に取り出すバッグの底の底沈没船のような古傘

帰還兵の父が生きた歳月と猛暑で死んだ虫がかさなる

深海に暮らすはずの釣り目鯛〉われに食われて媼になるかも

噓っぽい恋などしないハクセキレイ尾っぽダンスで求愛全開

8月の短歌      佐野豊子

食品尽き冷感タオル頸にまきスーパー目指す猛暑の道を

葉っ葉類目指す店内あれこれと選ぶはダメよウィルスつくと

歌詠まぬ義妹ふたりに助けられマスク、玉ねぎ、ジャガイモ届く

戦争を生きし母の介護病棟「お金あるの」が口癖でした

放映の95歳は生きのびて手足吹っ飛ぶ(戦時の記憶絵)