「お互いさまがんばりましょう」と書かれたる老女のはがきの文字読み取りぬ
辛らつな我への評価に疲れるがそうかも知れぬ湯のあたたかさ
フクロウの声にすばやくうずくまるエゾモモンガに孫身じろがず
女たちの子守歌 みなみ恋し ふるさと
「お互いさまがんばりましょう」と書かれたる老女のはがきの文字読み取りぬ
辛らつな我への評価に疲れるがそうかも知れぬ湯のあたたかさ
フクロウの声にすばやくうずくまるエゾモモンガに孫身じろがず
冷房車 吹く風見えねシャンと立つ乙女のスカートひらひらうごく
ついに言ふ生活のことを、娘らに言ふて良かった伸び伸びねむる
うたわなとその時その場励みきて心つかれておかめそば食む
ジョギングの汗おとしつつ加齢臭石鹸(シャボン)の泡立て拭いていたり
係留のイージス艦2隻左が「あたご」うす暗がりの舞鶴港に
触診で脈を取りつつ不整脈があるかどうかを確かめてゐつ
入居者の数の少なきホームにて医療行為もある程度はする
毎週を訪れて来る看護師の注意事項を記録に残す
月光菩薩背の生ま生まと映されてふり向かるるごと静かに呼べば
マイセンの皿にも寺の装飾にもぶどうの木ありぶどうパンうまし
三月十日死体ただよひし隅田川とうつつに思へず電車ゆ見つむ
三月十日 → 三月九日深夜から東京空襲があり大勢の人が亡くなった。大火事のときには川をめざさない。
炎がとおりやすい。プールは熱湯になった。風上に逃げる。
料理番組テレビに見れば様々の悩みを忘れ急ぎメモ取る
ちょっと強い風が吹くたび止まったり遅れてしまふわが内房線
香り良き珈琲飲まん十首目の歌を作りて清書せし後