津波にも日本の桜咲き初めり
ひとりにも遍(あまね)く春の日差しかな
春寒く被災者の列整然と
草燃えよ奈落の底ゆ立ち上がれ
こども等の命輝け春の風
女たちの子守歌 みなみ恋し ふるさと
津波にも日本の桜咲き初めり
ひとりにも遍(あまね)く春の日差しかな
春寒く被災者の列整然と
草燃えよ奈落の底ゆ立ち上がれ
こども等の命輝け春の風
・四時過ぎの青空静か遠く飛ぶ機影のありてふいに寂しも
瀬戸大橋渡るバスより見渡せば乱反射して内海静か
・明け近く粉砂糖のごと霜降りて稲刈り跡の田畑すがしも
・高架下流るる川に佇めば眼交を行く白鷺一羽
・落日のあとの夜の川風生れてオレンジ色の街灯を映す
来るボール来るボールを正面に受け止むるかなバレーの選手
四つ足で歩きてみればいつになく楽しさのありペンを捜して
博愛はアガペーといふ美しき言葉と聞きぬ老牧師より
冬ざれや薄切り大根(だいこ)のやうな月
マチュピチュも話題となりて初句会
春爛漫退職校長作品展
エスニック料理を待てば雪催
荒海や春の出雲の大社(おおやしろ)
柿の木の輝く芽吹き実る季をもの思ひつつ老いゆくよ
効率主義見えかくれするこの夕べ脳死男の臓器運ばる
猫の足すっと止まりぬフェンス上の鴉のダミ声猫を威嚇する
猫と鴉互ひに相手を読むごとし緊まりし時間その場に張りぬ
その瞬時鴉は黒き羽広げ猫の頭上を掠め羽ばたく
いつも居る鴉が俄かに飛び立てば勢ひのある一羽が追ひぬ
その翼たたみて鴉は木の上に戻りてゐたりまた一羽なり
母逝きてまだ三日もう三日なり一番電車の遠のく音する
妹は母との約束果たさむとまだ温き亡母のほほ皺伸ばす
表情の出てきたといふ母なれど泣くことなりき頭なでつつ