・父在りし診察室の窓下にギリシャの花とふアカンサス咲く
・歌の師ゆ母賜はりしアカンサス府中の庭に馴染みて謐か
炎昼の街 JUN
・ 菜園に虹立てながら水遣りす
・ 炎昼の街貌の無きひとの群れ
・ 日盛りに影濃くわが身置くも良し
・ 鑑三の石の教会日の盛り
・ 糊利かせ肌に馴染まぬ浴衣佳き
短歌研究8月号高野公彦選 消費すること monyo
経済は消費すること世のためとパクパク動く口を見てをり
百五まで
五月雨の畑中を行くランドセル
百五まで生きてじいじと裸の子
アカンサス町医者なりし父遙か
老いの域 NAOKO
堂々の泳ぎよきかなゆったりと泳ぐ鯉らに春の日及ぶ
われの年いつの間にやら老いの域社会の中心少し外れぬ
編集力 短歌研究7月号高野公彦選 mohyo
電子辞書読める人等のパーティでブックバザール静かに売れゆく
編集学校に番匠師範師範代と職名残りてネットに学ぶ
青空の残る夕刻立食のパーティにゐる家族思ひて
編集力は刃金の強さと柔軟な意志持つことと教えられをり
短歌研究6月号馬場あき子選 mohyo
・そのままを詠へば良いといふ妹の電話を切れずわが思ひ告ぐ
励ましてくれぬ NAOKO
・千葉支部で共に学びし江田さん氏名の上の「故」の字消したし
・人を避くるわれの弱さを気にかけて歌会にでよと励ましくれぬ
短歌研究5月号 馬場あき子選 mohyo
・雑踏の中より手を振り吾を迎ふわが夫ならむあの歩き方
・沓き日に夫を頼むと義母言ひき庭の畑の大根抜きつつ
「若葉の影」 JUN
・ テーブルに若葉の影の揺れ止まず
・ 風光る渋谷に坂の多ければ
・ 音の無き賑はひ哀し花辛夷(こぶし)
・ 花影は湖水の揺れに従へり
・ 春眠の覚めれば仮の世に戻り