夫逝きて二人語りし茶房にて子らと語れば皆涙ぐむ
短歌研究米川千嘉子選 NAOKO
遠き日のカラオケ店でわが唄う〈愛の賛歌〉の曲が聞こえる
短歌研究5月号米川千嘉子選 mohyo
クリームパン昔なつかしき味するとゆっくり食べる夫の顔よし
短歌研究4月号小池 光選 mohyo
希望して個室入院初めての一人寝の夜家族身に沁む
明日は家頑張ったなと病院の食事食みつつ涙あふるる
短歌研究4月号小池光選 NAOKO
湯上りに祖母が買いたるきな粉飴ひとつ頬張る髪冷えながら
湯冷めする冬の路地裏月冴えて番犬チェリーのなく声聞こゆ
冬晴れ 佐野豊子
冬晴れに〈清バス〉が来るよろよろと一期一会の二、三人乗る
もういない農家の庭の落柿さえ食べたかったひもじい少女は
金婚の夫婦が散歩に誘い合いあっちとこっちへ歩きだすなり
食前の祈りは三人まわりもち「カレーが冷める母さん長すぎ」
正月も感染力はパワフルで『コロナ禍歌集』まだ現在形
春立つ光 JUN
まだ固き二月の土に鍬を入れ
春浅し買ったばかりのスニーカー
春泥に歩を進めてやなほ生くる
武蔵野や春立つ光なほ淡し
雪降ってアルトサックス鳴く夜かな
長谷川祐次兄 NAOKO
結婚の承諾受けんと訪ね来て父母に向かえりかの日の義兄
炬燵にてリラックスする妹ら彼の言葉に緊張したり
県立の校長たりし若き日に宮柊二のもと歌にはげみぬ
喪主として姉は立ちたり挨拶に夫のもので捨てるものなしと
讃美歌を歌い祈りぬ兄妹ら兄の棺に胡蝶蘭を納む
短歌研究4月号小池 光選 NAOKO
湯上りに祖母が買いたるきな粉飴ひとつ頬張る髪冷えながら
湯冷めする冬の路地裏月冴えて番犬チェリーのなく声聞こゆ
短歌研究4月号小池 光選 mohyo
希望して個室入院初めての一人寝の夜家族身に沁む
明日は家がんばったなと病院の食事食みつつ涙あふるる