庭木々の大きくたわみ横なぐりの雨強さ増す家族待つ夕
白桔梗 JUN
白桔梗加賀の茶人の佇まい
朝霧や木造橋の向かうより
ひと日終へひと日は速し温め酒
松手入れ枝葉に透けて青き空
身に染むや古き映画の弾む聲
寒椿咲く NAOKO
独居する女性は病みて酸素ボンベ引きつつ階段上りて行けり
電子辞書買いたし店に幾たびも足を運べどまたも戻り来
歯が抜けし寂しさなどは詠うなよ自らにいう豆腐たべつつ
言の葉は君のくちより発語され暗示のごとく寒椿咲く
娘言う「セットにしようトーストに卵のサラダも付くからね」
また歩きたし NAOKO
CMの中味難解家に居る娘に聞けば(au)と応えぬ
ハンガーに掛れるTシャツ幸せの象徴に見ゆまた歩きたし
短歌研究10月号佐々木幸綱選 mohyo
白雲の一部と見えし白き月雲の流れて静かな月光
夏終はる JUN
花茣蓙を敷けば去年の吾と会ふ
離れいて日傘の奥の頸白し
見送るや読経の如き蝉時雨
グランドにボールが一つ夏終はる
生け垣を四角に切れば天高し
黒猫ミー NAOKO
40年経ってしまった過ぎし日の黒猫ミーに酷似する猫
亜熱帯の島になりゆく日本で熱中症の人が増えゆく
短歌研究9月号永田和宏選 木漏れ日 mohyo
人の背に葉桜の影濃くゆれて木漏日の中鳥の声聴く
傘を打つ雨音聴きて誰れも誰れも歩みて行きぬ駅までの道
頭上ゆく電車の響き遠のけば背負ひしリュックの肩に重たし
短歌研究9月号永田和宏選 同窓名簿 からっ風
八十年夢の如しと傘寿を迎ふ同窓名簿に黒印多し
短歌研究8月号馬場あき子選 mohyo
空高く輝る飛行機見上げつつ「遠くへ行きたい」若き日ありき