白桔梗    JUN

白桔梗加賀の茶人の佇まい

朝霧や木造橋の向かうより

ひと日終へひと日は速し温め酒

松手入れ枝葉に透けて青き空

身に染むや古き映画の弾む聲

寒椿咲く  NAOKO

独居する女性は病みて酸素ボンベ引きつつ階段上りて行けり

電子辞書買いたし店に幾たびも足を運べどまたも戻り来

歯が抜けし寂しさなどは詠うなよ自らにいう豆腐たべつつ

言の葉は君のくちより発語され暗示のごとく寒椿咲く

娘言う「セットにしようトーストに卵のサラダも付くからね」

夏終はる   JUN

花茣蓙を敷けば去年の吾と会ふ

離れいて日傘の奥の頸白し

見送るや読経の如き蝉時雨

グランドにボールが一つ夏終はる

生け垣を四角に切れば天高し

黒猫ミー  NAOKO

40年経ってしまった過ぎし日の黒猫ミーに酷似する猫

亜熱帯の島になりゆく日本で熱中症の人が増えゆく