あかきソファ  NAOKO

黒髪と真紅の薔薇を思わせてあかきソファが軽トラで去る

最後まで凛としていた上階の酸素ボンベを引く女逝く

紅白のどちらが先かと友は聞く梅の蕾よ風渡りゆく

寂しさ   NAOKO

「父母の寂しさの上にありし幸」今にし思うと姉は告げたり

不協和音聞かさるるごと星空に「広告」を出す人工衛星

「わざわい」の漢字一文字平成の御代は終わりて新春来たる

花束    豊子の短歌

戻りたい人生の場所はどこなのか小さな花束置きたいけれど

またひとり舞踊仲間はふるさとへもどる晩年島唄うたう

昨晩の宴のあとのおすそわけ不死鳥の咲く花束いただく

ミスばかり緑のみーで枝を打つ「柳」踊るに歳がなんなの

イナモミ(絶滅危惧種)JUN

友どちへイナモミ飛ばし遊んだ日

柿干すや日差しあくまで柔らかき

人の世の吐息の如し鱗雲

宴会の書状冬めくポストへと

仔犬連れ歩く小径も冬めきぬ

短歌研究1月号高野公彦選MOHYO

水張田の光まぶしく目を閉じてまた目を開けて車窓に揺らる

家族らと共に歩みて墓参する段差の所は支へられつつ

樹木希林死のニュース見つむ台湾で同年同月生まれし吾なり