ぶきっちょと母に叱られ折鶴の翼のはなより鈴なりわたる
また闇に雨音のして空気冷えもう寝よかとみずからに言う
どうにでもなれとトラック右折して雨の白梅枝ごと落とす
おぼろ月むかしの人の心には菜の花さいて詠み人知らず
顔をよせ桜一輪みてあればかわいいさくらやまとのさくら
女たちの子守歌 みなみ恋し ふるさと
ぶきっちょと母に叱られ折鶴の翼のはなより鈴なりわたる
また闇に雨音のして空気冷えもう寝よかとみずからに言う
どうにでもなれとトラック右折して雨の白梅枝ごと落とす
おぼろ月むかしの人の心には菜の花さいて詠み人知らず
顔をよせ桜一輪みてあればかわいいさくらやまとのさくら
ひと去れば夕日に映ゆる夏みかん
濃紺の光纏(まと)ふや初茄子(なすび)
世間とは付かず離れず昼寝かな
屯田兵(とんでんへい)拓(ひら)きし村や南風曇(はえぐもり)
木道の九十九折(つづらお)れるや水芭蕉(みずばしょう)
誰もゐぬ居間にもの書き鉛筆を置く時気づけり木々にふる雨
昏れ方の空茜して水ぬるむ富士の山すそ忍野八海
戦後期の闇市の面影(かげ)残す商店街(まち)ハモニカ横丁賑はひてをり
愛らしきパンダの親子見るごとし胡座「あぐら」の中に子を抱く母
福音を聴きて育ちぬ打たれたら打ち返せとはついに聞かざり
驟雨過ぎ路地に落ちたる葱一本行き場のなくて白骨のごと
新元号 心高ぶり何びとも新入生のごとく待ちをり
洞窟で見つからぬやう母親が子の首しめし沖縄決戦
殺されし子らとわれとは同年代沖縄思ひて夏日浴びをり
ゆるやかな時を過ごすや竹団扇
静けさや海に臨みて雨の薔薇
時の日に岬の鐘を打ちてみる
洋館に歴史の重み黴にほふ
岩にたわわ亀の子たちの甲羅干し
「神の愛知らずに来ただけ」白鳩がつと窓にきて手紙落とせり
伸び伸びと人ら泳げり大海の光背にして老人上がり来
暮れ近き夕茜雲つかの間の光といえど芒穂照らす