もうすぐ終戦記念日 NAOKO

軍人の教育を受け戦いし父の価値観戦後くずれぬ

軍帽の内側に母の写真秘め戦いし父遺品にて知る

新しき考え方には乗り切れず金儲けには疎き父なりし

食後には好みて子らに歌いくれしローレライの曲今も心に

糸満市のひめゆりの塔映るとき沖縄を思う旧姓なれば

村会議俳句    からっ風

村会議とはからっ風が日本近現代史講座の講師を務めた企業の方々の会である。村会議のメンバーに教え子がいて依頼されて3回にわたって講義し、終わってから会に誘われて月一度の勉強会で学ばせていただいております。

5分前精神信用の第一は時間厳守。約束を守ることである。信用はイコール学歴や家柄ではない約束の時間に遅れる人に信用はあり得ない。というまじめな方々の仲間にいれていただきはじめは短歌をだしていたが仲間として俳句を出してくださいと言われ今学ばせていただいています。

初春を 寿ぐ(ことほぐ)朝の 日本晴れ

眠りたる 街の静寂(しずけさ) 冬の月

軒下に 夕日眩しき 吊るし柿

宮参り 幼子の手には 千歳飴

熱燗を 干して年の瀬 鐘を撞く

やはらかき 朝の光に 萩の露 

紅葉狩り 平安貴族の 世界(よ)を偲ぶ

手術後の 妻見舞ひたる 冬の朝

如月の さむき月かげ 隅田川

鴉を詠ふ  NAOKO

降る雨に鴉階下を歩みをりただ単純に餌を求めて

雨中の路面に翼濡らしつつ鴉は歩む左右にゆれて

つゆの雨翼重たき鴉居て嘴着けぬ雨水に寄りて

ゴミ置き場の塀より空へ飛ばむとす鴉は生きて翼広げて

ゴッホ描く「カラスの麦畑」黄の畑に群れ飛ぶ鴉最後の作なり

蕨餅   JUN

古都巡る足の疲れや蕨餅

籠りゐる我が家に届く初音かな

たんぽぽや子供のゐない通学路

揺蕩(たゆた)ふて花と吾が身の風任せ

亀鳴くや南極旅行の写真集

「もういちど もういちど」   佐野豊子

八重岳の蝶にあいたし千葉(せんよう)の言葉つやめくおきなわの雨季

雨粒に取り出すバッグの底の底 沈没船のような古傘

深海に暮らすはずの〈釣り目鯛〉われに食われて媼になるかも

もういちど もういちど」と真夜に聞く昭和歌謡に人の恋しさ

キリストの脇腹を突く槍の先したたりやまずたとえば辺野古

石榴口(ざくろぐち) NAOKO

石榴口江戸の銭湯入り口が狭くて屈みするりと入れり

湯の温度下がるを防ぎ湯の前に石榴口を設けしという

湯舟から石榴口抜け流し場へ移りし客ら何かおもしろ

江戸と京いずれも華麗な形生み明治の初期まで存続せしと

石榴の実絞りて取りしその汁で流し場のかがみを磨きていたり

思い出  NAOKO

少女期のバレエ教室バーに並び胸張りて立つ指示を受けつつ

高安寺のバレエ教室タンバリンパーンと響きて少女ら飛びぬ

家なかに長時間座る長椅子が罅われて来ぬわがししむらも

甘味噌をご飯に混ぜて与えくれし祖母のナーコと我を呼ぶ声

五月雨の家籠もりなり草むらにけぶるがに咲く矢車菊は

春の水  JUN

ぐーぱーのパット開きし黄水洗

子供らの影を浮かべて春の水

啓蟄や菜を採り終へし土の畑

妻の愚痴遠くに聴くや花ミモザ

春霞だれも分からぬ明日かな