惜春

ひとを待つ暮れ行く春の聖(ひじり)橋

春惜しむニコライ堂の袂(たもと)より

初蝶

初蝶の解き放たれし空があり

春を喰ふアスパラガスは手掴みで

春雷や見知らぬひとと言かはす

残雪の磐梯連山曇りなし

無口なる息子と分かつ柏餅

朧の空

登り坂一足ごとに春の海十字架の朧の空に母見舞ふ

花衣ふたりの違ふ老い支度

梯子乗り  JUN

初暦輝く余白ありにけり

読初めは「蛇笏と楸邨」床の中

梯子乗り虚空を目指し上り初む

鳶口に軋む青竹梯子乗り

一人だけ頭上に地球梯子乗り

春を待つ空堀川の野塩橋

元朝の雪の光に目覚めけり

新春の障子輝く夜明けかな

雀二羽影が行き交ふ雪の庭

手作りの餃子も並ぶ御節かな

疎遠なる人ばかりかな年賀状