母はずっと清瀬の病院に入院中である。しっかりしている日とそうでもない日がある。昼夜起きていろいろな話をしハイな状態が続きウトウトしている日が2日くらいあったりすることがる。
一日の過ぎ行く時間がゆったりとしていて1日が24時間の私とは違い1日48時間だ。伯母さんの死を伝えるかどうか考えたが母のお金もお花代として包もうということになりはっきり言うことになった。
母は伯父さんを慰めるからオーバーを出せとさわいだらしい。「伯父さんは15年前になくなったよ。」 「ウソ昨日もここに来て話したじゃない。」
母を説得したつもりであったが夜中に大きな声で賛美歌を歌ったりお祈りをしていたらしい。病気だからあるいは老人だから仕方がないと思っていたが実際に母にあって話してみると母の世界ではおじいさんもおばあさんも生きている。私のことを母親だと思っているらしい。
それが15年前に終わっているとかもう誰も彼も亡くなっていると言われたらどんな気持ちだろうかと思った。
童話「浦島太郎」のはなしが現実味を帯びて私の心にのしかかってきた。
伯母さんの死など知らせなくて良かったのだろうか。わたしならどうだろう。弟妹がいつの間にか死んでいる世界に連れて行かれたらどんなに慌てることだろう。
母は時々この地球上にある他の世界と行ったり来たりしている。
綾子