短歌と感情 宮 柊二先生 (9)

短歌と感情(昭和四十三年五月十八日)  −長狭高校講演速記録より抜粋

名をあげてストーブおくれよと笑いつつ師がいえばわくストーブおくれよ

「名
をあげてストーブおくれよ」っていうのは、つまり有名になって偉くなってこの学校にストーブを寄贈しろよと先生がおしゃったという意味である。今、君たち
は定時制の生徒だけれども、一所懸命に働いて有名になってお金持ちになれ、立派になれ、そして立派になったら君たちよ、今この寒い教室にストーブを寄贈し
ろよとおっしゃった。そしたら、みんなが、どっと笑った。

こんな歌、皆さんは、いい歌だとは思われませんか。僕はとってもいい歌だと思う。この作者は今はお母さんである。お母さんになっても歌を作っている。だんなさんは自動車の運転手をなさっているらしい。

お二人は良く喧嘩するらしい。夫婦喧嘩を。喧嘩をしても、怒っても、彼も一所懸命にお客さんを乗せて、努めて、神経を使って帰って来るんだなあと反
省する らしい。そういう歌を作るんです。そして単純に喧嘩なんかしちやいけないななんてそんな歌も作ったりつまり雄雄しく生きて行っているのである。

この女生徒は、今 二十二、三歳になり雄雄しく働いている基礎には、歌をうたい歌を作るということが、根本にあるのではないか。歌うことによって、生まれながらの純粋が甦ってきて、その人間をまた新しい力強いものに立て直してゆく。

つまり、人間の輸血のような力が、歌をうたい歌を作るという行為の中にあるようなきがするのである。

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