破船    佐野豊子

帰宅して四方八方虫の音に野たれ死にした気分にひたる

冬の草ぽきぽき折れば燃えるゴミ今宵の満月澄みはてて寒む

暮れ方に遠い連山燃えている影絵のなかゆき寿司などを買う

稽古場は破船となりて売られたり後継者なく資金も尽きて

未練なり琉球人形いろあせず恋の「綛掛け」(かせかけ)永遠に舞ませ