夫の癌この寂しさをいかんせむ寄り添ひゆかな落葉踏みつつ
夫とわれ仲良く生きなむ今日もまた「ひるのいこい」のテーマ曲流れ
女たちの子守歌 みなみ恋し ふるさと
夫の癌この寂しさをいかんせむ寄り添ひゆかな落葉踏みつつ
夫とわれ仲良く生きなむ今日もまた「ひるのいこい」のテーマ曲流れ
凍星(いてぼし)や宇宙に生きて七十年
多摩川と富士と妻あり初景色
初日記吾の歴史は吾のもの
七草粥振舞はれ皆善人に
友は皆老ゐし賀状の低き嵩
もう未来見えない日本そのはなのもっと見えない美(ちゅら)さ沖縄
空暗く鳥きしきしと羽博(はう)つなりヤハウェわが神われら生きたし
なんとなく隠しもちたる裂布(さいで)あり祖母の紅型(びんがた)木綿なれども
その山は歌の香久山その山は琉歌の神すむ恩納岳 撃つな
いま思う一心のちから恋をひめ醜女舞たる太き足腰
佐野豊子は「ていだ(太陽)」によって改めてその出自のかなしみを問い直すことに情熱を燃やした。戦火に洗われて消えてしまった家系、ことに祖母の育みによって養われた心の沖縄を取り戻そうと「琉舞」の稽古を復活した。彼女はクリスチャンであるが、その信仰はどこか古代的な琉球の祈りと無縁ではない。その原点の沖縄がしだいに熱く体の中に甦るのが感じられる。 馬場あき子先生評
千葉のビル冷え冷えと建つ買い物へSOGOの中に入り行きたり
返り来て椅子に座れば夕五時の市からのメロディ市民われ
上階の若い奥さん三人目の赤児を抱きぬ退院したと
生みたての卵のように初々し赤児を見ればふわっと笑う
令和の代生まれ来し子よ母の胸に無心に眠る赤児のやわ髪