「市川」を詠む       空っ風                                       

福寿草春の気配ぞ水木洋子邸(みずきてい)書斎ゆ眺む庭の日溜まり

老木の伏姫桜の黒き幹根本の瘤に小枝の一輪

白秋も詠みし真間川何処かと探して足止む桜花周遊

小旗振りウオーク順路を誘導す国府台緑地の木々は芽吹きぬ

八幡(はちまん)の宮居の参道(みち)に日和下駄音ひびかせてけふ荷風忌

風ひかる〈江戸川ウオーク〉の先頭は人影小さく市川橋(はし)渡りゆく

国府台砲車の軋むまぼろしは戦争遺跡をめぐる夏の日

声明(しょうみょう)の調べは凛とこだまして澄みのぼる月は祖師堂照らす

行徳の小さき酒房のジャズライブ冬の月光玻璃戸ゆ届く

江戸の旅笹谷うどんを啜り食い舟出す船頭(おさ)の声は幻聴(まぼろし)

 市川は、自然と人が資源だといわれ、文化的・歴史的資産の豊かな街である。古来より多くの文学者が訪れ、数多の作品を残している文学の街でもある。               この市川に生活の基盤を置いて三十年・・・・。妙趣ある市川の自然と歴史・歳時等々に触れて時折、拙い詠草の歌材にしている。                                  「市川市稲門会会報」復刊11号(通巻18号)平成30年5月1日

    

    

  

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