合同歌集30首より 佐野豊子

八重岳の蝶にあいたし千葉(せんよう)の言葉つやめくおきなわの雨季

雨粒に取り出すバッグの底の底沈没船のような古傘

帰還兵の父が生きた歳月と猛暑で死んだ虫がかさなる

深海に暮らすはずの釣り目鯛〉われに食われて媼になるかも

噓っぽい恋などしないハクセキレイ尾っぽダンスで求愛全開