灯り   NAOKO

閉店で安価にしますのチラシ見て気軽に来しが何がな寂し

ショッピングカー押せる夫人は下着類買いてゆきたり値下げ札見て

閉店の洋品店の小柄なる主人を見ればカーディガン買う

年配の婦人服多しその中でモスグリーンのカーディガン選ぶ

秋深しまたひとつ消ゆコロナ禍に川上洋品店の灯り

安売りだ買おうぜとか買ってやるという気持ちではない優しさが伝わり涙と鼻水をたれながら読ませていただきました。最近涙もろくなりました。

昭和歌謡   佐野豊子

直線に吾の筆圧つよすぎて黒く擦れつつ初心の歌詠む

「もういちど、もういちど」と真夜に聞く昭和歌謡に人の恋しさ

沖縄へとんぼ返りの用すませぽろり忘れる小瓶の地酒

泡盛をのむ勢いで話すたび寒緋桜の咲くや三姉妹

姥桜(うばざくら)われに夫と息子いて人生そんなにわるくもないか

私は台湾の基隆から引き揚げて三重 大阪 京都 東京府中でくらしてきました。沖縄の同じ年の人たちが泣き声で米兵に見つかると母親に首を絞められて殺されたので人数が少ないと聞きました。私は50歳になるまで沖縄に行けませんでした。特に私が悪いわけではないとおもいながらも私は無事に引き上げてきた何とも言えない後ろめたさでした。妹は反対に沖縄舞踊をならいその舞踊が踊られなかった沖縄に伝えた先生につき沖縄に何度も行き沖縄の運転手に沖縄人なのに東京に住んでいるあんたを乗せたくないと言われたりしながら沖縄の土地が危ないとか中国人といっても軍人のようながっちりしている人が畑を耕している自衛隊がくると狭い島の畑地が踏み荒らされそうだし攻撃でもされたらと密かに考えていることも聞いてきました。今は自衛隊がきているそうです。妹は沖縄をとても大切に思い実践しています。

「冬の終わりに」  からっ風

雲切れて富士山(ふじ)の頂上(いただき)残雪は夕茜して春の日は昏る

街路灯消ゆる薄明コロナ禍の空茜して夏の太陽(ひ)昇る

江戸東京博物館(えどはく)の講演会(レクチャー)終えてくつろげる七階茶寮ゆツリーを見上ぐ

寒空に二つ三つの木守り柿夕日にひかるふるさと杳し

〈六十年安保〉世代も八十路入り茶房のタンゴは「冬の終わりに」

懐かしい歌を集めてもらいました。杳の字が見つからず困りました。(よう)とよむことがわかりアップしました。作者はとおしという意味で使っていました。両親もなくなりご近所にも空き家はご迷惑がかかり処分しました。それが4種目で難しい文字を使ったのかなと感じました。

短歌研究11月号佐々木幸綱選 mohyo

鳥 風に木の実運ばれ芽を出しぬそれぞれの場に葉の照り返す

ご飯のとぎ汁をボールにとっておきお父さんが毎朝 植木鉢にかけています。つつじの枝が小さく折れていたのでたださして置いたのにしっかりしてきています。大きな木には少し根に沿ってぬかをまいたらよいとも聞いた。私はかなり膝が悪い お父さんは腰が痛いしできないと思う。早く元気になって木々にも優しくしてあげたい。

木々に降る雨    mohyo

背(せな)さすり握手かたくし送り出すシンガポールに吾娘(あこ)たびするを

曇天に吾娘乗る機影は見えずして音のみ響きシンガポールへ

打ち上げる大輪の花火(はな)吾にせまり消煙の白クラゲのごとし

来なければ気づかぬ花火の消煙は夜風に白く流れ消えゆく

誰もゐぬ居間にもの書き鉛筆を置くとき気づけり木々に降る雨

大昔どこかに出して採られなかった歌を直してまたここにアップしてみました。変わらないことは今でも背中頭を撫でて硬い握手をしてそれぞれの勤務先にいきます。友人の娘さんはアメリカに住んでいてと話を聞くと神戸に住んでいる三女など近い方だと思うのですが東京駅での別れが辛く市川駅までにしています。

歴史散歩   からっ風 

尋ね来し歴史散歩は梅雨晴れの松戸本土寺あぢさゐの寺

「江戸名所図会」(めいしょずえ)行徳舟の水駅(みずうまや)ばせお・一茶ら遊客多し

べか舟の今はなつかし浦安の埋立の地にディズニーランド

花街に伝えこし芸廃れゆくイキとイナセな江戸のかっぽれ

七福神間合いをとりて恵比寿さま新春散歩の12キロゆく

行徳舟  江戸期、日本橋小網町から小名木川・新川の流れに乗り行徳(市川市)まで往復した定期便の舟。乗客以外に塩・魚・野菜などを運んでいた。また成田山や寺町行徳への参詣客でにぎわった。

水駅(みずうまや) 「すいえき」とも呼ばれ河川の船着き場のことである。

べか舟  山本周五郎はその著『青べか物語』の舞台である浦安のべか舟について作中で『べか舟は一人乗りの平底舟で貝や海苔の採集に使われた小さな軽快形の舟で外側を青ペンキで塗り・・・』と。

ばせお  芭蕉のことである

秋茄子  JUN

久々の文出しに行く良夜かな

青果店夜長の町に煌々と

ふと我に返れば虫の鳴き初めて

秋茄子に日の集まりてをりにけり

跡継ぎの居らぬ果樹園よりの桃

秋茄子は嫁に食わすなともいいますが最近ぬか漬けにして食べています。mohyo

八十路の坂道   からっ風

母の背で〈万歳!!〉叫びしとほき日は戦勝祝賀の行列の中

義母遺(のこ)す歌集『ポポの木』ひもとけば妻との若き日〈昭和〉を詠ふ

ジャズ喫茶〈新宿ACB(あしべ)〉のステージに坂本 九(きゅうちゃん)の歌妻とのデイト

反戦デー蝟集せし日の居酒屋を探す八十路の新宿の街

コロナ禍の八十路行く身の散歩道 八幡の宮居 弘法寺の坂道(さか) 

第26回古今伝授の里短歌大会ペアの部

ペア短歌の部で入賞(大和地域公民館長賞)をいただきました。

「古今伝授」とは歌道伝授の一つ。中世、古今集の語句 訓話 注釈

を師から弟子に伝え授けたことです。特に岐阜県郡上市一帯に伝わる

地域を総称して「古今伝授の里」と呼ばれています。

夫/長谷川祐次 紀伊国屋(きのくにや)書店の前で待ち合せ新宿駅ゆ小走りで行く

妻/長谷川綾子 若き日の姿と変わらぬ走り方手を振り笑顔の夫(つま)とし思ふ

妙な作品ですがいつも聖句は心にNAOKO

ヒトの耳むかしは尖っていたときく曲がりてまるき我が耳を思う

おもしろく眺めていたり水かきと五本の指と伸びしこの爪

眼と鼻と口と内臓動物はヒトと共存なし得るか否か

人間は霊長類でトップなのか焼かれしコアラ猛火の山火事

大海に飛沫を上げて着水するシャチの躍動海に消えたり