昭和の匂い  佐野豊子

だみ声のカラスが鳴いて目が醒めるふたつ命のふれあう一瞬

敗れたり天覧相撲に攻めきれず貴景勝は土俵に腹這う

素枯れ菊ぽきぽき折って焚き火した昭和の匂いは何故か哀しい

子犬の売人  NAOKO

十五万二十七万その値札置かれし後ろに子犬ら眠る

ゆくりなく子犬は屈みいと細き便を落とせり硝子のむこう

区切られし硝子の空間売られいる子犬の床を拭きいる店員

子供には抱っこさせない大人には抱かせるという子犬の売人

相棒の茶色の毛並みその背なに顔寄せ眠る黒毛の子犬