大嘗宮     JUN

冬晴れや大嘗宮の千木(ちぎ)の空

焼き芋の熱さ分け合ふ風呂帰り

冬温し機械の声はみな女声

献血をできぬ齢や玉子酒

旅立ちや街灯灯る冬の朝

電子辞書    NAOKO

靴下も履いてしまった出るしかない団地の集会夕暮れ時を

新しきボーイフレンド才あれど少し短気だ名は電子辞書

黙読に慣れ来し我に辞書からの歌人の音読茂吉を聞けり

キッチンに座りておればテーブルの茹で玉子がつと「たべないの」と聞く

本棚の『赤光』見れば旧制で昭和と書かれわが若き文字

彼方青海    佐野豊子

人はみな悲しみの器。さりながら祈りの卓にフルーツかおる

幾たびのしきりなおしか隠退の老牧師いてその妻われは

ご先祖にうーとうとうと幅広の沖縄線香たて祈る人

集落をまもる備瀬の福木道みどりこみどり彼方青海