19歳のときのうた      mohyo

漏れさせる光をかへす蜘蛛糸のやはらかくして意外に切れず
灰色の雲徐々に集まりて視界にゆるる白きおいらん草
亀裂する雲間より見ゆる橙色のメッキの月はマヌカン照らす
人居らぬ教室の中黒板にかきなぐりの文字ありて静けし
出生の秘密を知らず育ち来し混血児K君美しき瞳もつ
ポツポツと音は切れつつ曲となる白き鍵盤に母の手ありて
ユニホームの赤き色もよしポーランドの選手団今我前を行く
理由なき憂いもあるか水たまりの雲みつめつつ友待つひととき
疎ましき日曜の午後一人居て五月雨の音をあらためて聞く
えびがにが片手をあげる恰好(さま)なしてノッコリノッコリ道を横切る
隆起せし胸誇るごと雑踏に女たたずむ夜の立川

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