・雨あがる手児奈霊神堂昏れゆきて人けなき苑枝垂れ桜花(ばな)咲く
・お不動の丘しづもりて雨季に入る紫陽花の藍日々に色濃し
・広辞苑繙く指先ゆっくりと狭庭の木蓮白く咲(ひら)けり
日本歌人クラブ編2016年現代万葉集 mohyo
・若き父「出征は明日」と母の手を初めて取りぬ椰子の木の下
・死にし赤子(こ)の水葬ありて鳴る汽笛こぞりて泣きぬ引揚げ船に
・算盤を習ふと希ふに「軍人の娘ぞ計算せずに生きよ」と
短歌研究年刊歌集2017年 mohyo
・バス揺れて白山連峰遠く見ゆ風の盆踊りさあ今夜から
・片足立ち斜めに両手広げたる男踊りの静かで強し
・風の盆見あぐる夜空昔より変わらぬ星々帰路のバス待つ
戦後生まれ70年 NAOKO
・戦後生まれ70の我新しき戦前に立つ平和とは何
・億単位兆単位ともなるトランプ氏の武器の輸出の手腕を思う
冬木立 JUN
・吾が名呼ばれ年越し太鼓打ちにけり
・空の青際立たせてや冬木立
・湯豆腐や天下国家はさておきて
・本心もふんわり覆う襟巻や
・さよならは言わずにマフラー遠ざかり