まっすぐに吾の思ひ告げ太極拳すればゆるみて足裏ぬくしも
短歌研究3月号 高野公彦選 mohyo
「体験に来よ」と孫呼ばな15年ぶりに開けたる掘り炬燵なり
金星と下限の月を見上げをりこの今誰の仰ぎてをらむ
炬燵ゆ眺む からっ風
幼少期吾を気遣いくれし姉表情少なに今車椅子
はや冬至真紅の山茶花柚子の黃に夕日の届くを炬燵ゆ眺む
短歌研究2月号 高野公彦選 mohyo
独り座す老人多し駅のカフェ一人の時を楽しむ顔顔
食パンと玉ねぎ牛乳買えば良しもう少しカフェで一人本読む
風の盆歌 からっ風
灯を消して窓より月を見つつ聴く越中おはら風の盆歌
おだやかな二百十日を迎えむと祈る祭りの風の盆歌
短歌研究1月号高野公彦選 mohyo
バス揺れて白山連峰遠く見ゆ風の盆踊りさあ今夜から
雪洞(ぼんぼり)に書かれし恋うたさりげなく切なくありて風の盆うた
片足立ち斜めに両手広げたる男踊りの静かで強し
胡弓の(ね)三味線(しゃみ)と融けあひ進みくる風の盆踊り最後の夜を
風の盆見あぐる夜空昔より変わらぬ星々帰路のバス待つ
短歌研究1月号高野公彦選 からっ風
秋場所を告げる太鼓は風にのり胸おどらせる両国の町
場所入りの関取衆に群がりて声上ぐる児等に秋の陽やさし
江戸博の七階茶寮にくつろげりビルの狭間に隅田川光る