やはらかき春の陽浴びて弘法寺のベンチに座るはひととき愉し
人気なき弘法寺の杜の樫の木に何を言ふらむカラス啼きをり
弘法寺の伏姫桜を見上ぐれば空には高く小さき飛行機
微笑み からっ風
戦後期のやさしき祖母の微笑みは軽度の認知症とおぼしき
人けなき庭 からっ風
雨上がる手児奈霊堂昏れゆきて人けなき庭に枝垂れ花咲く
短歌研究9月号高野公彦選 mohyo
迷ひたる同窓会に出席し溶けてゆくなり胸のつかえの
冷房の強さを感じパーカーを羽織りて座る同窓会に
友らいふ別荘のこと旅のこと同窓会にパワーをもらふ
短歌研究8月号高野公彦選 mohyo
鎮魂と平和への祈りわが裡に重なりて読む「昭和のうた」を
新築の家々地震に強しといふ窓細長く縁側のなし
街並みの家変われども5時になる「家路」のメロディ聴きつつ帰る
短歌研究7月号高野公彦選 mohyo
熊本産さやえんどうの筋を取る熊本地震のニュースを見つつ
「見えてるよ」神戸の吾娘よりメールきぬ月見上げつつ送信すれば
イエスよりユダのその後が気になりし若き日過ぎぬ新緑の道
8月の俳句 せせらぎの音 JUN
・端っこにわが家で取れし胡瓜揉み
・球場の天女の如しビール売り
・少女とて驕る女の洗ひ髪
・花茣蓙やバレエシューズが無造作に
・せせらぎの音も聞こえて夏料理
象のはな子 松岡尚子
・ほぼ毎日通ったといふ客も居て象のはな子はついに果てたり