幼子と小庭耕す暮の春
忘れ得ぬ時とめ卒業写真かな
移ろはぬもののありけり老桜
漆黒の夜空を覆ふ桜かな
雨催ひ花の別れを惜しみけり
共に見しこと NAOKO
・本読むとひとり籠もりぬテーブルに置かれし林檎のかをり立つなか
・ぬばたまの夜半に浮かべり過ぎし日に手児奈の井戸を共に見しこと
短歌研究4月号 馬場あき子選 mohyo
・夜咄の茶事始まると雁行す若きがわれの荷を持ちくるる
・蝋燭の芯を鋏で切りしとき炎の明るさ増して揺らめく
・正客の松風の音言ひしとき頷きてきく湯のたぎる音
・待ち待ちし薄茶一服いただけば手の中にある茶碗の重さ
・薄暗く炎のぬくさ静けさよこのひとときを素直にをりぬ